報道について2 (ブログ・アーカイブ)


 

 2010年05月10日:「取調室の禁煙化」に関する毎日新聞の記事

 2009年09月20日:「朝青龍ヒザげり報道」の悪意と欺瞞

 2009年06月11日:誰に "謝る" のか?

 2009年03月24日:フェデックス事故の続報

 2009年03月23日:フェデックス事故の報道

 2009年03月22日:米下院に関する報道の中で

  


 
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■2010年05月10日:「取調室の禁煙化」に関する毎日新聞の記事

 警察署内の「取調室」に関する記事というのは珍しいのだが・・・実にお粗末な記事である。
 はっきり言って、この合田月美という記者はジャーナリストに求められる「想像力」のかけらももっていないか、あるいは自分自身がヘビースモーカーなのだしか考えられない。
 
 なぜなら、この記事では「タバコを吸わせること」と「円滑な取り調べ」とを無条件に結びつけ、法律が "出来てしまったこと" に困惑する現場、という視点でしか見ていないからである。
 この記事を読む限り「被疑者」の圧倒的多数は喫煙者であり、タバコ欲しさに素直に自供することも少なくない、という設定が暗黙かつ無条件に行われている。
(ここでは示せないが、記事にはまさにそのことを露骨に暗示するイラストまで添えられている)

 しかし、成人全体の中での喫煙者は非喫煙者よりもかなり少ないのであり、犯罪を犯すことと喫煙との関係も実証されてはいない。だとすれば、取り調べを受ける「被疑者」の中にもタバコを吸わない者、タバコの煙が嫌いな人間は少なくないはずである。
 引用記事の中にある警察庁の幹部の発言(青字)は、この点に関してきわめて重大な事実を示しているのだが、この記事(記者)はただ流してしまっている。
 司法機関において、というか国民意識の大勢において「推定無罪」の原則がほとんど無視されているこの国の現状からして、被疑者の側から取り調べの警察官に「タバコを吸うのは止めてくれ」などと「要求」できるであろうか?
 記事末尾の補足説明(赤字)にあるように、「調べ官の足が容疑者に当たったり、机が激しく動く」ような "取り調べ" が行われるのであれば、「嫌がる被疑者にタバコの煙を吹きつける」ような行為も十分考えられるのではないだろうか。
 山梨県警は「禁煙が容疑者の権利を侵害する」ことを心配しているそうだが、「ヤニ臭い取調室に閉じこめられることや取調官の喫煙が、被疑者の人権を侵害する」ことについてはどう考えているのだろうか。この記事はそういったことに全く触れていないのである。

 私は、毎日新聞が日常多くの優れた取材・記事を見せてくれる新聞であると評価している。また、巨大な読売、朝日に対抗する "第三極" として頑張ってくれることに、大きな期待をもっている。それだけに、残念な記事だと思う。


取調室禁煙:消えゆく「1本吸うか」…15都道府県警実施
  「刑事さん、1本吸わせてくれよ」「悪いな、禁煙なんだ」。取調室を禁煙にする動きが各地の警察で広がっている。警察庁によると、これまでに15の都道府 県警が取調室を禁煙にした。公共スペースの禁煙の動きが取調室にまで波及した形だ。4月には警察庁が取調室の禁煙の検討を全国の都道府県警に通達で要請し た。だが「容疑者を落とす小道具としてたばこは必需品」などと、捜査への支障を心配する声は現場に根強い。果たして取調室の禁煙は全国に広がるのかーー。 【合田月美】
 07年4月、愛知県警が、本部庁舎の建て替えをきっかけに取調室を全面的に禁煙にした。これを皮切りに禁煙化が各地で進む。警察庁によると、現在、警視庁と岩手、福島、富山、石川、福井、神奈川、岐阜、三重、滋賀、大阪、山口、沖縄、北海道の各道府県警に及んでいる。
  警察に逮捕された容疑者は「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」に基づき、自費で購入したたばこを留置場の決められた場所で吸うことができ る。喫煙時間や本数は警察署長の権限で制限され、留置場管理を担当する警察官が監視する。03年に「健康増進法」が施行され、不特定多数が出入りする公共 スペースの禁煙化が進んだ。警察施設も例外ではないが、取調室は不特定多数が出入りする場所ではなく、「聖域」となっていた。
 警察庁は昨年11 月、全国の都道府県警の留置場管理部門と刑事部門を対象に取調室禁煙化の賛否を問うアンケートを実施。留置場管理部門は全都道府県警が賛成する一方、刑事 部門は一部の「態度保留」を除いて賛否が半々に分かれた。刑事部門に残る抵抗感が浮かんだ結果だが、警察庁総務課は「社会的な流れもあり、捜査優先だけを 理由に取調室を聖域化するのはどうか」と話す。
 09年8月に禁煙にした石川県警は「捜査員も『心配したほどの支障はなかった』と話している。取 り調べの適正化も一層進む」と話す。未実施の山梨県警は「禁煙が、法令で定められている容疑者の権利を侵すことにならないかを含めて検討中」という。千葉 県警のあるベテラン捜査員は「たばこは容疑者の緊張をほぐすのに欠かせない。禁煙にすると取り調べがやりにくくなる」と言う。一方、警察庁のある幹部は「取調室の禁煙に反対するのは、捜査員自身が吸いたいという実情もあるのではないか」と話している。
 ◇取調室◇
 国家公安委員会規則で、容疑者の逃走や自殺の防止、換気や防音のための適切な設備を整えるよう定められている。机をはさんで調べ官と容疑者が向き合って座り、調べ官には補助者がつく。「取り調べの適正化」に取り組む警察庁は、09年度に約3億6000万円を投じ、机の下に遮へい板を取り付けたり、机の脚を床に固定する措置を講じた。調べ官の足が容疑者に当たったり、机が激しく動くのを防止するのが目的だ。
毎日新聞 2010年5月10日 15時00分(最終更新 5月10日 17時24分)


 
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■2009年09月20日:「朝青龍ヒザげり報道」の悪意と欺瞞

  昨日(19日)の取り組みで横綱朝青龍が玉乃島を破ったのだが、相手の後ろから「送り出し」を決める際に "膝を使って押し出す" 動作があった。
 相撲の規則で禁止されているのは胸や腹を蹴ることだけで、それ以外の部位については禁じていない。そもそも「蹴たぐり」や「蹴返し」という決まり手さえ存在するのである。
 また、 "組み合う" ことを中心とする格闘技においては "手足を使って相手を殴打する" ことは厳しく禁じられるのが一般的であるが、相撲には「張り手」という技がある。以前に、まるでグローブのように分厚いバンデージを巻いた手で、相手の顎やこめかみを狙ってKOする力士が現れ、それは行き過ぎとして厳重注意・禁止されたが「張り手」という技自体は現在も認められている。
 今回の朝青龍の「膝押し出し」など、話題にするとしても彼の集中力、勝利への執念の現れという肯定的な見方しかできないのであり、ことさらに "批判" するというのは単なる悪意の表出に過ぎない。
 下に示すのは、20日午前の Yahoo News に表示された見出しの一部であるが、最近のスポーツ紙の "やり口" の汚さ・醜さが凝縮されているのが良くわかる。

ニュース
* 朝青“右ヒザげり”に抗議電話が殺到(デイリースポーツ)20日 - 9時23分
* 朝青ひざ蹴り!?7連勝も抗議殺到…秋場所7日目(スポーツ報知)20日 - 8時0分
* 朝青龍、ウラ技?背後から右ひざ蹴り/秋場所(サンケイスポーツ)20日 - 7時52分
* 朝青 おきて破りのひざ蹴り出し!(スポニチアネックス)20日 - 7時5分

 第一に、相撲協会幹部が「問題ない」と明言していることを記事本文には書きながら、見出しではそれを無視して、「ウラ技」だの「おきて破り」だのとあたかも朝青龍が反則技を使ったかのように書き立てていること。
 そして第二に、「抗議電話が殺到」とあるが、記事本文を読むとかかった電話は "30通" だというのである。全国どころか海外にまで同時放送されている番組に、30通の電話がかかったことを "殺到" というのは、明らかに意図的な誇張である。
 単なる「好き嫌い」や「人種偏見」からターゲットを選んで攻撃し続ける、そのためには "読者を騙す" ことも平気で行う、朝青龍本人が「またおまえら面白おかしく書くんだろ」と言うのも当然である。
 全部とは言わないが、この国のスポーツ・メディアの下劣さにはヘドが出る。


 
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■2009年06月11日:誰に "謝る" のか?

 3月23日に書いたフェデックス事故の記事と、 "根" がまったく同じ問題が別の形で出現した。
 絵に描いたような冤罪がやっと認められた(でもこの年月は戻ってこない)足利事件の菅家氏の "ことについて" 、検察幹部が記者会見を開いて(記者たちに向かって)謝罪した、という。
 記事の中でも、この幹部が「菅家さん本人に対しては今後、直接謝罪する意向を示した。」と当然のように書いていて、記者がそのことに何の疑問も感じていないことがわかる。

 
足利事件:最高検・伊藤次長検事が謝罪
 90年に4歳女児が殺害された足利事件で再審開始が決定的になり17年半ぶりに釈放された菅家(すがや)利和さん(62)について、最高検の伊藤鉄男次長 検事は10日、記者会見し「真犯人と思われない人を起訴し、服役させたことは大変申し訳ないと思っている」と謝罪した。過去の冤罪(えんざい)事件で地検 の次席検事が謝罪コメントを発表した例はあるが、最高検によると、最高検幹部が謝罪した例はないという。
 伊藤次長検事は東京高検に対し、速やかな再審開始決定と再審公判での早急な無罪判決に向け、適切な対応をとるよう指示したことも明らかにした。
 東京・霞が関の最高検で会見した伊藤次長検事は謝罪のコメントを読み上げた後、再審開始前の異例の謝罪について「検察として頭を下げるということ。それに基づき高検に指示をした」と説明。菅家さん本人に対しては今後、直接謝罪する意向を示した。
 東京高裁は近く再審開始決定を出す見通しで、その後、宇都宮地裁で再審が始まることになる。検察側は再審公判で無罪論告を行うとみられる。【岩佐淳士】
 (毎日新聞 6月10日)


 
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■2009年03月24日:フェデックス事故の続報

 フェデックス事故の続報が出た。
 相変わらず。時事通信の関心は、被害者と言う側面ももつフェデックス社が "自分たちの前で" 謝罪したかどうか、という一点に絞られているらしい。何とも不気味で、不愉快な態度である。
 これは、言うまでもなく "航空事故" である。仮にあの瞬間、貨物機ではなく満員の客を乗せた旅客機が進入していた場合を考えると身の毛がよだつ。
 地上で瞬間風速21メートルを記録していたという報道もある。微細な気象状況の観測体制、そのデータの伝達システム、管制塔とのコミュニケーションの実際など、成田空港側についても改めて調べ、考えなければならないことが山積しているではないか。
 それらを何も伝えず、問題提起もしようとせず、フェデックス社の "態度" しか報道しない。この通信社は、読者をどこに誘導しようとしているのだろうか。

「ご迷惑お掛けした」=フェデックス社が謝罪会見−成田
 米貨物航空会社フェデックスは23日午後、成田空港内で2度目の記者会見を開き、氏家正道北太平洋地区担当副社長(41)は「事故により従業員が巻き込ま れ、悲しい日となった。空港関係者や利用客などいろいろな方にご迷惑をお掛けし、心よりおわび申し上げる」と謝罪した。
 着陸に失敗して炎上した機体について同副社長は、過去の事故や欠陥は「知る限りではない」と回答。しかし、積み荷の中身や当時の気象データの把握状況など具体的な情報は「調査中」を繰り返した。
3月23日18時3分配信 時事通信


 
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■2009年03月23日:フェデックス事故の報道

 この国で最近目立っている不愉快なことの一つ。
 何か問題が起きたときには企業や官庁は記者会見を開く。ところが、その際に必ず全員が起立して会見相手、すなわち報道各社の記者たちに向かって深々と頭を下げ、そこでフラッシュが一斉に光るというののが、当然の "儀式" のようになっている。
 何か過失があって、特定の人々や企業に損害や迷惑を掛けたのであれば、その相手に対して責任をとる、求められれば謝罪するのは当然である。ところが、どう も "それ以前に" 報道機関に対して謝ることが慣例化し、メディア各社(の記者たち)もそれを当然と思っているようなのである。
 下記の時事通信の記事では、はしなくも見出しにその "本音" が露出している。
 冷静に考えればフェデックス社の言っていることには何の問題も無く、そもそもこの段階で記者相手に謝罪する理由など何もないのである。
 勝手に「全国民を背中に背負った気分」になって、正義の味方を気取って一方的に相手を断罪するような態度は、一種のファシズムの始まりと言っても過言ではない。

謝罪の言葉なく=フェデックス社が会見−貨物機炎上
  米貨物航空会社フェデックスは23日正午ごろ、氏家正道北太平洋地区担当副社長が成田空港内で会見を開いたが、「状況の詳細をまだ把握できていない」と繰 り返し、約10分で打ち切られた。謝罪の言葉を求められても、「現時点では調査中で申し上げられない。情報が入り次第、会見を開いてお知らせする」と話し た。
3月23日13時6分配信 時事通信


 
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■2009年03月22日:米下院に関する報道の中で

 以前にも書いたことがあるが、日本のメディアは日本の "政治文化" の歪みに関する基本的かつ重要なことを伝えないばかりか、その歪みを増幅し固定化させていることが少なくない。
 例えば、今話題の「AIG のボーナス問題」でも、オバマが怒った、とか "街の人の声" などの散発的な報道の他には「議会下院でスピード決議」とあっさり済ましてしまっている。
 ここでとりあげるのは、AIG 問題そのものではない。
 議会で、この法案に賛成し・可決に至らしめた議員の政党構成についてである。与党である民主党は大部分の議員が賛成しているが少数ながら反対した議員もいる。野党共和党ではほぼ半分に割れる結果となっている。
 さて、少数の反対した議員について民主党では "除名" 騒動が起きているだろうか? また、共和党は "分裂" の危機にあると報じられているだろうか?
 いずれも "NO" である。
 しかし日本で同じ状況になったらどうだろうか?
 自由民主党は本来多様性をもつ "幅の広い政党" であった。戦後ずっと一党で政権を執りつづけながら、独裁的暴走に至らなかったのはそのためである。
 ところが小泉純一郎氏が総裁になってやったことは、郵政民営化を梃子とするその多様性の完全否定であり、メディアもその手先となって "造反議員" などと馬鹿げた言葉を連発したのである。
 厳正に独立した政治家であるべき議員が、党首の言いなりにしか発言しない "票" でしかないのであれば、二大政党制など機能しない。しないどころか、51対49でも一党独裁と変わらぬものになってしまうのである。
 日頃の政治信条と正反対の行動をしたのなら、また自分の支持者を裏切ったのなら、 "造反" という表現も有り得る。たかが政党の党首(国会議員としては対等だ!)や党の幹部議員と意見が異なったからと言って、メディアが "造反議員" などと呼ぶこと自体が極めて異常なデモクラシーを否定する行為なのである。

AIG賞与 「税率90%」適用 米下院 支援受けた大銀行も
 【ワシントン=渡辺浩生】公的管理下で経営再建中の米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が社員に支給した高額賞与をめぐり、 米下院は19日、90%という異例の高税率を適用する法案を可決した。強い批判を浴びている高額ボーナスの大半を国庫に取り戻すことを目指しており、公的 支援を受けた他の大手金融機関も対象としている。上院も同様の法案を準備しており、上下両院は早期成立を図る構えだ。
 法案は賛成328票(民主243、共和85)、反対は93票(民主6、共和87)で可決された。オバマ大統領が16日に「あらゆる法的手段を使って支給を阻止する」と強い姿勢を表明してからわずか3日後のスピード可決となった。
 課税の対象となるのは50億ドル(約4900億円)以上の公的支援を受けた企業で、世帯年収が25万ドル(約2450万円)以上の従業員が1月以降に支給 された賞与。適用されれば約1700億ドルの公的支援を受けたAIGだけでなく、シティグループやバンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックスなど他 の大手金融機関のほか、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)など政府系住宅金融2社も対象となる。
ーーーー以下略ーーーー
 3月21日7時57分配信 産経新聞


 
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