スポーツと社会2 (blog アーカイブ 2013〜)


 

2015年10月16日:モニュメントと言い放つ異常

2015年08月24日:セクシーラグビールール

2014年06月28日:サッカー・ワールドカップ

2013年09月11日:天理大学柔道部暴力事件

2013年03月29日:蒼国来についての続報

2013年03月26日:大相撲八百長事件で「解雇 無効」判決


 
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■2015年10月16日:モニュメントと言い放つ異常

 小さいことのように見えて、ウラにある "重大な" 本音が透けて見えている、ということがある。
 「五輪担当相」なる人物が、更地になった建設予定地(旧国立競技場跡地)に立って述べた「言葉」に注目する。

 「安保法制」で最近やや影が薄くなっているので、要点を繰り返す。
 国立競技場の計画白紙撤回においては、工事費が最大の焦点だったことは当然だが、本来主役であるべき選手や競技関係者からも痛烈な批判が出ていたこと、オリンピック後の維持管理の見通しについても異常な甘さ、と言うか好い加減さが指摘されていたこと、を無視してはならない。
 すなわち、工事費や景観以外の主要な批判は大きく「競技施設としての性能=使い勝手」と、スポーツ以外の利用も含む「運用=収益確保につながる施設計画・運営計画」の二つに集約されていた。どちたも極めて現実的かつ重要な問題である。
 前者については、世界を代表する最高の選手たちに無駄なストレスを与えることなく競技が実施され、観客も快適に観覧できる設計でなければならないということである。工場の建設にたとえれば「高い生産性」「高度に安全で、職員が快適に働ける環境」の確保が最優先であって、外見の "インパクト" のためにそれらを犠牲にするなど言語道断、というのと同じである。
 後者については、大手メディアでも再三とり上げられたので「金の話」は繰り返さないが、この種の施設では「大は小を兼ね "ない" 」ことを強く指摘しておきたい。観客が確実に6万人を超えるようなイベントは、オリンピックとワールドカップ・サッカーを除けば殆ど存在せず、どちらも日本で開催されるのは数十年に一度に限られる。すなわち、健全な維持運営=高い利用率を確保するためには3万人〜5万人程度のイベントに、快適かつ合理的な利用料で提供できることが必須なのである。これについては、ロンドンオリンピックのメインスタジアムが、当初から五輪後の「減築=縮小改築」を見込んだ設計であったことが良い参考になる。

 遠藤と言う人物は、森喜朗とのラグビーコネクションによって「五輪担当相」になったらしいが、上に要約したような "国立競技場問題" をめぐるこれまでの経緯をまったく理解していないようだ。
 彼は、更地になった建設予定地(旧国立競技場跡地)に立って以下のように述べたというのである。

「レガシーとして残るもの、国民にとって最高のモニュメントといえるものを(工費の)上限の枠内で造っていきたい」
(2015年10月13日17時10分 スポーツ報知)


 いやはや、レガシーでモニュメントである。
 選手や競技のことなど無関心。この巨大施設を、今後何十年にもわたって誰がどうやって維持運営して行くのかについても、ナーンも考えてない。
 「大恩人・森センセイのモニュメント」を立派に造ることでアタマが一杯なのだろう。


 
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■2015年08月24日:セクシーラグビールール

  今また、開催中の「世界陸上」をTBSが "独占中継" している。
 どうせ不愉快になるだけなので、マトモに観る気になどならないが、たまたま入った飲食店などで流れていることがある。相変わらず、極く少数の特定の選手だけを興味本位に執拗に取り上げて、「それだけ観れば充分」と言わんばかりの "偏向放送" を繰り返しているようである。
 この世界陸上中継に関連して、TBSはかつて「キャッチコピー問題」という事件を起こしている。特定の選手に対して奇妙なキャッチコピーを勝手に創作、番組中どころか番宣でも連呼した上、ポスターにまで記載したのである。男子選手については「スクランブル交差点を3歩で渡る男」など馬鹿馬鹿しいものが多かったが、女子選手に対しては、競技成績や社会的業績とは無関係の「私生活」や「容貌」などを揶揄しているような、侮蔑的・差別的なコピーをつけている例があって極めて不快であった。
 有力選手たちからの批判・反発を受けて、日本陸連が正式に抗議したことで、やっと取り下げたのだが、番組中の織田裕二の能天気な放言などを聞いていると、今でも "本音" は少しも変わってないのだと感じる。
 そこで、今度は日テレである。多くのメディアで報道されているが、ここではネット上の「弁護士ドットコム・ニュース」の記事を引用する。

日テレがラグビーW杯番組サイトに掲載した「セクシー動画」に非難殺到、削除に
弁護士ドットコム 8月23日
 日本テレビが9月に放送する「ラグビーワールドカップ2015」の番組公式サイトで、水着を着た女性たちの胸や太ももなどの動きを強調しながらラグビーのルールを紹介する動画「セクシー☆ラグビールール」を公開したところ、ラグビー関係者を含めて、ネットで大きな批判が巻き起こった。騒動のあと、動画は8月23日になって、サイトから削除され、閲覧できない状態となった。
 問題になった「セクシー☆ラグビールール」の動画は8月20日、ネットで公開された。「日テレラグビー班」のツイッターアカウントによれば、ラグビー初心者の「ルールが分かりにくい」という声にこたえて、バラエティー番組とコラボして動画を作ったのだという。
----以下略----


 この2つの事件の "ルーツ" は全く同じものであると考える。つまり、
   1.陸上競技やラグビーなど、地味なものには "一般人" は関心無いよねェ
   2.これまでの「スポーツ番組」とは何か違うことやらないと視聴率とれない!
   3. "一般人" でも興味もつような、分かりやすく刺激的な要素が必要だ。
 というような思考回路が透けて見えるのである。
 そして、結果的に突出したのが、テレビ局の制作現場に濃厚に残る「ジェンダー差別意識」だったと言う訳であろう。
 要するにTBSや日テレの関係者は、そもそも自分が取り上げる競技に対して興味が無く、愛情も敬意も抱いていない、ということである。彼らには、スタジアムで活躍する選手たちも単なる素材=コンテンツの一つに過ぎないものと見えているのだろう。さもなければ、このような傲慢な、敬意のかけらも無いような企画が出てくるはずがないではないか。
 もう一つ、彼らはこれらの番組を "本気で観ている" 視聴者をも侮辱している、ということを強調しておきたい。


 
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■2014年06月28日:サッカー・ワールドカップ

 サッカー、ワールドカップのグループリーグが終わり、日本は1敗2分けでグループ最下位となり、決勝トーナメント(ベスト16)には進めなかった。
 この結果について、メディア上には様々なコメントが流れている。

 実際に日本のサッカーの第一線に深く関わって来た人々、ワールドカップ "だけ" ではなく普段からサッカーに関心を持ち、選手やチームを応援してきたファンのほとんどは、この結果を冷静に受け止め、まずは監督と選手への敬意と感謝を述べている。
 一方で、まるで「それ見たことか!」「思ったとおり(駄目だった)」と言わんばかりの罵詈雑言を書き連ねるものも、残念ながら少なくない。
 ネガティブなコメントの中で、「期待した結果にはならなかった」ことに単純に失望して腹を立ててしまうケースは、まあ仕方がないと言える。
 そうではなく、もともと自分が気に入らなかった監督(ザッケローニ)や特定の選手(例えば本田)を、チャンスとばかりに "叩く" ことに精を出す一群の人々は実に醜い。また、「理由がつけば誰かを袋だたきにする」ことばかり常に狙っている、歪んだ攻撃性をネットで発揮する人々も、醜悪と言うより惨めなものである。
 ベスト16に進めなかったことを、「あり得ない失態」「国民への裏切り」などと騒ぎ立てる人々に訊いてみたい。
 <スペイン・イタリア・ポルトガルも、日本と同様にベスト16には進めなかった。あなたは、日本代表チームの実力がこれらのチームより "上" だと思うのですか?>

 実際に、本大会に出場したのは世界から選ばれた32チーム、一方日本の世界ランキングは40位以下なのである。また、グループリーグ4チームの中でも、日本のランクは最下位だった。
 もちろん、一つでも多く勝ってくれることを願って私も応援していた。しかし、上記の事実は、グループリーグ最下位が残念ではあるが「十分あり得る結果」であったことを示している。
 この「あたりまえの事実」から目を背け、自己肥大的な妄想を垂れ流したメディアにも重大な責任があると言わざるを得ない。非現実的な「夢記事」で煽り続けたメディアほど、今度は「叩き記事」に熱中している様子は、まさに「持ち上げておいて落とす」そのものである。


 
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■2013年09月11日:天理大学柔道部暴力事件

 まったく、呆れるしかない。

 天理大学は、1年生部員に暴力を振るった4年生部員を僅か30日の停学処分にしただけで、柔道部の籍は残すという "処分" を発表した。
 注意するべきなのは、「停学」というのは大学・教授会が決定することであって、柔道部にはそんな権限はない、ということである。
 実は、天理大は先に柔道部の「無期限活動停止」という "処分" を発表している。これは、当然(1年生を含む )全ての部員に適用されることになる。
 つまり、天理大学柔道部は、暴力を振るった4年生部員たちを(部としては)何ら処罰も処分もしていないのである。要するに、これらの4年生が悪い事をしたとは考えず、単に、世間を騒がせたから "自粛" して見せただけ、ということ。この件が "加害者" と "被害者" の居る「事件」だ、という認識が全く無いということが良く判る。

 1年生部員の立場から見るとどうなるだろうか。入学したての5月からいきなり理不尽な暴力を振るわれ、挙げ句に怪我までさせられ、それでも新人戦を目指していたら「無期限活動停止」で試合に出る機会も失われたのである。しかも、暴力4年生は全員「部員」として残っている。いずれ、「事を公にした=部外に漏らした」ことに対して、陰惨な報復が待っていることだろう。


 
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■2013年03月29日:蒼国来についての続報

 あまりにもデタラメな調査ー解雇であったことが明らかになった結果、どうやら相撲協会が控訴する可能性は低くなったようだ。支援者が提出した復帰支援の署名簿もいくばくかの効果を発揮すると思われる。油断は出来ないが、とにかく「(協会の)権威を守ること=解雇正当と主張、が第一」といった原理主義者の暴走が起きないことを祈る。
 スポーツ・メディアでは、控訴断念ー力士復帰が既定の事実のように報じられているが、2年間のブランクによる力の衰えをどのように克服するのか、復帰時の地位(番付)をどうするのか、といった多くの問題がある。
 これらについて、毎日新聞が27日の記事で判りやすくまとめている。(下記)

 また、言語教育関係のネットワークで、蒼国来(事件)について論じた素晴らしい論考に出会ったので、是非紹介したい。
 言語文化教育の分野で様々な活動をされている「谷岡ケイ」さんによる
『雑感 蒼国来がこの2年で教えてくれたこと』
である。

 *その後、相撲協会は最も理性的で適切と思われる対応に転換し、蒼国来関は名古屋場所で幕内力士として土俵に復帰、(ブランクがあるので)全敗するのでは・・という大方の予想(親方自身も含む)を裏切って、負け越しこそしたものの十分な健闘を見せた。(追記)

 

大相撲:八百長問題 元蒼国来解雇無効 協会、控訴断念の可能性 調査に疑問の声も
毎日新聞 2013年03月27日 東京朝刊
 
 大相撲の八百長問題で、日本相撲協会から関与を認定され解雇された元幕内・蒼国来(29)に対する解雇無効判決を受けて、協会は26日、両国国技館で4月3日に臨時理事会を開くことを決めた。八百長行為をしたという新たな物証の提示や、元蒼国来側が求めてきた元力士証人が出廷する可能性は低く、協会が争うには材料が乏しい。控訴断念の可能性もある。
 裁判への対応などを決める理事会に先立ち、協会は宗像紀夫外部理事(弁護士)を委員長とする危機管理委員会を開いて判決内容を分析し、4月1日にも北の湖理事長に報告する。ある委員は「協会側不利の流れは認識していた。これから過去の経緯について精査し結論を出したい」と話す。
 八百長問題の特別調査委員会は放駒前理事長(元大関・魁傑)体制下で調査を進めた。その中で、八百長に関与した元力士の証言が変転するにもかかわらず、引退勧告を拒否した力士を解雇した対応について「慎重にやっていなかったからこうなった(敗訴した)」と、調査に疑問を投げ掛ける声もある。また、公益法人への移行申請期限が11月末に迫る中、協会内に新旧体制の対立構図を抱えたままでは、認定機関に対し心証が悪くなるという見方もある。
 元蒼国来の解雇時の番付は西前頭15枚目。27日に夏場所新番付編成会議が開かれるが、八角広報部長(元横綱・北勝海)は「(蒼国来の)枠は考えていない」と話した。【上鵜瀬浄】


 
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■2013年03月26日:大相撲八百長事件で「解雇 無効」判決

 いわゆる「大相撲八百長事件」で、解雇された力士の一人で、最後まで無実を主張して裁判(地位保全)に訴えていた蒼国来(そうこくらい)の第一審裁判が結審し、「解雇 無効」つまり“冤罪”であったとする判決が出た。
 大相撲八百長事件は、若いうちに一気に出世できず、力の衰えるまま幕下に“定住”してしまった力士たちによる「互助会」的行為の行き過ぎが表面化したものだった。
 ところが、どうやらこれに相撲協会内部の「外人力士排斥派」が便乗して、無関係な外国出身力士を冤罪に陥れて解雇した事件 でもあったのではないかと私は考えている。
 蒼国来もそのような標的の一人だったのだと思うが、彼は断固として無実を主張して裁判に訴え、ただ一人結審まで闘ったのである。
 
 蒼国来は中国国籍のモンゴル人(内モンゴル出身)で、大柄ではないが将来三役は十分可能と言われた有望力士だった。 元々、真面目さとハングリーさは有名で、しかもなかなかの2枚目、人気力士になる可能性が高かった。
 
 相撲協会は、無実を訴えた多数の外国出身力士に、「日本にお前たちの居る場所はない」「黙って辞めれば退職金を払う」と迫って、解雇を受け入 れさせたという。
 蒼国来以外にも法的手段に訴えた力士がいたが、協会側の分が悪くなって“解雇”が難しくなると、退職金の上積みプラス1年間の給与の追加支払 いなどという条件を付けて「和解」に持ち込み、“自主的に退職”させている。
 本当に「不正行為」をしたことで解雇するというのであれば、退職金など払う必要はなく、このことを見ても協会は「真相」などどうでも良く彼ら を追い出したかっただけ、ということが良く判る。
 
 蒼国来は、一貫して“無実であること”、“力士を続けること”だけを主張し、金銭的な条件提示は全て拒否した。 また、所属する荒汐部屋の親方や力士たちも支援に回り、彼(の闘い)を応援するホームページの最初の版は部屋関係者が作成した程である。
 私は、総合的に見て彼は無実であると思っていたので、今回の地裁判決には救われる思いである。相撲協会側が、大きな決断をして、彼を力士に復帰させて欲しいと心から願っている。
 
 しかしながら、日本の「役所や企業」が同様の事態になると必ずやるのが「際限のない上告・抗告」という方法である。
 組織側は、担当者が替わりながら、かつ費用は「経費」で落としながら、いくらでも続けることができる。
 一方、個人の側は金銭的にも体力的にも追いつめられ、何よりも本人の時間=人生を空費させられ、やがて力尽きることになる、という構図である。
 <死んだ後で“勝訴”しても、何の意味もない!という例は過去に多数ある>
 
 このケースでも、現在29歳の蒼国来にとって、さらに裁判が続けば実質的に力士復帰は不可能になってしまう。
 相撲協会が「この手=時間稼ぎ」を使ってあくまでも蒼国来を排斥するのか、潔く「調査不十分」を謝罪して彼を力士の地位に戻すのか、一般的に は前者になる可能性が高いと考えられる。
 なぜならば、協会内部の議論の中で、必ず「これを認めると、(既に決着した)他の元力士までいろいろ言い出して大変なことになる」とか、「協会が一旦負けを認めた ら、次に(蒼国来が)何を言い出すかわからない」といった「意見」が出てくるであろうから。
 
 そのような方向に(協会を)行かせないためには、2つの方法しかない。
 第一は、市民の声。役所と違って大相撲は「観客」と「スポンサー」によって成り立っている。
「誤りを認めて、蒼国来を土俵に戻せ」という声が大きければ、これを無視することは難しい。
 第二は、文部科学省。日本相撲協会は文科省所管の財団法人であり、そこでの運営に問題があれば勧告・指導を行うことができる。
 これは選手(力士)の人生に関わる問題なのだから、全柔連の暴力問題と同様かそれ以上に重大なこととして関与してもらいたいと思う。
 文科省を動かすには、実は国会議員の「声」が決定的に有効である。ただ、そのためにはやはり市民の声、ジャーナリズムの発信が必要であること は言うまでもない。


 
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