情報・報道・メディア_2

(blog アーカイブ 2009〜2015)


 

2015年09月18日:産経世論調査(記事)に対する毎日新聞の批判

2015年08月27日:ワイドショーと反中・反韓

2015年07月21日:惨めで醜悪なNHKの小細工

2015年07月20日:巡査の "性別"

2015年06月02日:年金機構で起きたこと

2014年06月24日:「見出し」の悪意

2010年05月10日:「取調室の禁煙化」に関する毎日新聞の記事

2009年09月20日:「朝青龍ヒザげり報道」の悪意と欺瞞

2009年06月11日:誰に "謝る" のか?

2009年04月15日:見出しテロ" に画期的判決

2009年03月24日:フェデックス事故の続報

2009年03月23日:フェデックス事故の報道

2009年03月22日:米下院に関する報道の中で


 
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 ■2015年09月18日:産経世論調査(記事)に対する毎日新聞の批判

 9月17日の毎日新聞に注目すべき記事があった。

「産経世論調査:安保法案反対デモの評価をゆがめるな」
と題して、産経新聞とFNNが行った合同世論調査の結果報道を厳しく批判した記事である。

 いわゆる「やらせ記事」などについての批判はこれまでにもあるが、同業他社による世論調査の結果の評価・報道に対する批判記事というのはあまり見たことが無い。
 調査が「安保法案」に関することであり、見出しの表現からも「この法案(採決)そのものに対する毎日と産経の姿勢の違いからの批判記事」と見られかねないのだが、内容はそうではない。
 世論調査の手法とその結果の評価、それをどのように正しく伝えるか、という点に絞った純然たる「科学的批判」であり、著者も「世論調査室長」という言わばプロフェッショナルなのである。
 
 記事の内容は100%同意できるものである。
 「教材」として使いたいと思うくらい良いので、URL に加えて敢えて全文を紹介する。(写真は除く)

産経世論調査:安保法案反対デモの評価をゆがめるな
毎日新聞 2015年09月17日

 ◇産経新聞とFNNの合同世論調査にもの申したい
 安全保障関連法案の参院採決が迫る中、9月12、13日に実施した調査で「安保法案に反対する集会やデモに参加したことがあるか」と質問し、3.4%が「ある」、96.6%が「ない」と答えたという。これを受けて産経新聞は15日の朝刊で「参加した経験がある人は3.4%にとどまった」と書いた。
 安倍政権の応援団として、全国に広がる安保法案反対デモが気に入らないのはよく分かる。「毎日新聞や朝日新聞はデモを大きく扱っているが、デモに参加しているのはたった3.4%にすぎない」と言いたいのだろう。
 だが、日常生活の中で特定の政治活動に参加する機会のある人がどれだけいるだろうか。この世論調査は全国の男女1000人に電話で質問したとされ、そのうちデモや集会に参加したと答えた人が34人いたと推定される。素直に考えれば、これは大変な人数だ。全国の有権者1億人にこの数値を当てはめれば、安保法案反対デモの参加経験者が340万人に上る計算になる。
 調査ではさらに、デモ・集会に参加したことがないと答えた人(回答者全体の96.6%)に「今後、参加したいか」と尋ね、18.3%が「参加したい」と答えたという。これはつまり、回答者全体の17.7%がデモ・集会に参加したいと考えている計算になる。実際に参加したと答えた3.4%と合わせると、5人に1人が安保法案反対のデモ・集会に参加した経験があるか、参加したいと考えていることになる。有権者1億人に当てはめれば2000万人。この調査結果にゆがみがないと仮定すれば、「安保法案に対する世論の反発の大きさを示した」と書かなければならない。
 もちろん、自宅の固定電話にかかってくる世論調査の電話を拒否する人も多く、調査に応じた人の割合を有権者全体にそのまま当てはめること自体に無理がある。そもそも1000人程度の無作為抽出による世論調査というのは、国民意識の大まかな傾向を探るのが目的だ。1000人中1人いるかどうかも分からない特定の政治活動参加者について数値を割り出せるものではない。デモ・集会の参加経験を無理やり数値化したうえで、法案賛否などの数値と同様に扱い、「3.4%にとどまった」などと書くのは、世論調査の社会的な役割とはほど遠い「扇動記事」と言わざるを得ない。
 産経新聞の記事は、デモ・集会に参加したと答えた3.4%の内訳分析まで行っている。「参加経験者の41.1%は共産支持者で、14.7%が社民、11.7%が民主、5.8%が生活支持層で、参加者の73.5%が4党の支持層だった」。これも首をかしげざるを得ない。参加したと答えた推定人数わずか34人を母数に、支持政党の内訳をパーセンテージで、しかも小数点以下まで算出することに統計的な有意性はほとんどない。数人の回答が変われば、大きく数字が動く。あえて記事にするのなら、「参加経験者の大半は共産党などの野党支持者だった」と書くのが関の山だ。そして、デモ参加者に野党支持者が多いことには何の驚きもない。
 1000サンプル程度の無作為抽出調査では、パーセンテージで通常3〜4ポイントの誤差が生じるとされる。にもかかわらず、3.4%という小さな数値を根拠に「デモに参加しているのはごく少数の人たちであり、共産党などの野党の動員にすぎない」というイメージを強引に導き出したのが産経新聞の記事だ。とても世論調査分析とは呼べないものであることを指摘しておきたい。【世論調査室長・平田崇浩】


 
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■2015年08月27日:ワイドショーと反中・反韓

 大手出版社の講談社がネット公開している「現代ビジネス」サイトに、「テレビのヨミカタ」というページがある。
 その最近号で「軽率なワイドショーに物申す。ネガティブな中韓報道を売り物にするな!」という記事が出た。
 前から気になっていたことについて、具体的に例を挙げて論評してくれているので紹介したい。

「テレビのヨミカタ」2015年08月19日(水) 高堀 冬彦
軽率なワイドショーに物申す。ネガティブな中韓報道を売り物にするな!

・・・日本人の近隣諸国に対する悪感情は高まるばかり。昨年秋、内閣府が行った外交に関する世論調査によると、中国と韓国に対して親しみを感じないと回答した人の割合は1978年の調査開始以来、最高だった。領土問題を中心とする複雑な政治問題が背景にあるのは間違いないが、民放の一部ワイドショー、ニュース番組の報道も悪感情をいたずらに煽っている気がしてならない。・・・

・・・一部ワイドショーやニュース番組を眺めていると、まるで日本だけが一等国で、中韓両国は蛮国。戦前の新聞報道と近い臭いを感じる。番組制作者は自分たちのアンバランスな報道が近隣諸国との関係を害する理由になってしまったら、どう責任を取るつもりなのだろう。・・・

全文は こちら

 話はワイドショー一般で始まっているが、具体的に挙げているのはテレビ朝日系列の「サンデースクランブル」である。

 この記事の指摘・主張については全面的に同感であるが、番組制作者・放送局に対する "要望" のみで終ってしまっている点が、やや残念である。
 テレビ批評という枠組みではあまり話を広げられない、ということかも知れないが、踏み込んで欲しかったのは、「何故、このような番組が日曜昼間に放送され(続けて)いるのか」ということである。そこには当然「視聴者が望むから」という答えが用意されているだろうが、それ自体がこの種のワイドショーに "影響された結果" と言えるのだろうか。
 「反中国・嫌韓国」という "空気" は、もっともっと広く、根深く、この国を汚染していると感じる。例えば、大手ポータル・サイトの Yahoo のニュースページにおいて、中国や韓国の「ニュース」に対する "コメント" として掲載されている投稿を見れば、その殆どが狂気のような反中、嫌韓の罵詈雑言で占められている。

 政権の暴走だけにとどまらず、この国が今様々な面で "危険" な状況にあるということを痛感せざるを得ない。


 
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■2015年07月21日:惨めで醜悪なNHKの小細工

 アメリカとキューバが54年ぶりに正式に国交を回復した7月20日、アメリカのケリー国務長官とキューバのロドリゲス外相が会談、その後共に記者会見に臨んだ。
 その記者会見に関する報道において、NHKがまた異様な "報道" を行っている。

  "異様な" というのは、下記の色文字化した部分でわかると思うが、2点である。
 第1点は、両国と国交をもつ "独立国" である日本の "公共放送" と称するテレビ局が、この2国間の対話についてなぜ「アメリカの国務長官」を主語として伝えるのか、ということである。日本はアメリカの一部、あるいは属国なのだとNHKは考えているのだろうか。

 第2点はもっと悪質である。グアンタナモは1903年以来アメリカが租借地として占有している地区であり、海軍基地として運用されている。よって、単に「グアンタナモ」あるいは「グアンタナモ(海軍)基地」と呼ぶのが正しく、NHK以外の報道は全てこのいずれかとなっている。
 ところが、NHKだけはこれを「グアンタナモ収容所」と強弁するのである。
 グアンタナモ基地の一部には確かに2002年に設置された収容所が存在するが、キューバの外相がその "収容所だけを" 返還してくれと言ったとでも言うのだろうか
 実に "見え見え" の話ではないか。NHKは、ニュースの中で基地の返還」と言いたくなかった、あるいは "言わないほうが良い" と考えたのだろう。アベ総理に絶対服従の姿勢が生み出した、本当に惨めで醜悪な小細工である。

まず、産経ニュースの記事を示す。(青字は筆者)

完全な正常化、高いハードル 両国外相が会談
産経ニュース 2015.7.21 09:09


 【ワシントン=青木伸行】ケリー米国務長官とキューバのロドリゲス外相は両国が54年ぶりに国交を回復した20日、ワシントンの国務省で会談し、完全な正常化を目指すことを確認した。しかし、人権、基地問題など具体論では平行線をたどり、ハードルの高さを改めて浮き彫りにした。
 会談後の記者会見で、ケリー長官は国交回復を両国関係の「新たな始まり」としつつ、キューバの人権問題の改善を求め続ける意向を表明した。
 そのうえで、「この画期的な出来事は、両国政府を隔てている多くの相違の終わりを意味するものではない。完全な関係正常化は長く複雑な過程であり、忍耐が必要だ」と述べた。
 これに対し、ロドリゲス外相は、「封鎖(制裁)の完全な解除と、違法に占領しているグアンタナモ(米海軍基地の返還、(制裁による)人的、経済的被害に対する補償が、関係正常化へ向け死活的に重要だ」と述べ、制裁で被った損失を補償することなどを要求した。
 制裁解除について、ケリー長官は「オバマ大統領は、議会に制裁解除を求めており、適当な時期に解除されることを希望している」と指摘。しかし、基地の返還は「現時点でグアンタナモの租借を変更する意思はない」と突っぱねた。
 長官はまた、8月14日にキューバを訪問し、首都ハバナの米国大使館で行われる国旗掲揚などの記念式典に出席すると発表した。


これに対して、NHKは以下のように報じているのである。(赤字は筆者)

米キューバ 関係正常化へ引き続き協議継続
NHK NEWS WEB 7月21日 7時16分


 アメリカとキューバが正式に国交を回復したことを受けて、アメリカのケリー国務長官はキューバのロドリゲス外相と会談し、半世紀以上にわたる対立の解消をアピールするとともに、経済制裁の解除など、引き続き関係正常化に向けて取り組んでいくことで一致しました。
 アメリカのケリー国務長官は20日、国務省で国交回復に合わせてワシントンを訪れていたキューバのロドリゲス外相と会談しました。国務省でアメリカの国務長官がキューバの外相と会談するのは、1958年以来です。
 会談後の記者会見でケリー長官は「きょうは歴史的な日だ」と述べるとともに、来月14日にキューバの首都ハバナを訪問し、国交の回復を記念する式典に出席する考えを明らかにしました。
 これに対してロドリゲス外相も「国交回復と大使館の再開の実現は両国の努力の結果だ」と述べ、経済制裁の解除や渡航規制の緩和など、関係正常化に向けて協議を続けていくことで一致しました。
 一方でキューバにあるアメリカのグアンタナモ収容所について、ロドリゲス外相が「関係正常化に向けては、返還が必要だ」と述べたのに対して、ケリー長官は、いまのところ返還する予定はないと述べるなど、対立する場面もありました。
 また経済制裁の解除についても、アメリカ議会で多数を占める野党・共和党の議員から反対の声が上がっており、関係正常化に向けた課題も浮き彫りになっています。


 
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■2015年07月20日:巡査の "性別"

 7月17日夜から18日にかけて、京都府警の巡査がパトロール中にバイクで「あて逃げ」して書類送検された、というニュースが配信された。
 小さなニュースなのだが、これまでに京都府警の幹部警官等が悪質な交通違反を起こす事件が立て続けに起きていたことで、全国ニュースになったものと思われる。

 産経新聞、時事通信、京都新聞の各見出し(ネット配信)は以下の通りである。(赤色は筆者)

「頭が真っ白になって逃げた」京都府警の女性巡査がパトロール中にあて逃げ(産経新聞)
女性巡査、公務中当て逃げ=罰金刑受け依願退職--京都府警(時事通信)
女性巡査がパトロール中に当て逃げ 京都「頭が真っ白に」(京都新聞)

 まるでキイワードのように、全ての記事で「女性巡査」と表記されているのが異様である。
 例えば、女性巡査が大男の犯人を見事に取り抑えた、というような場合、さらには、巡査本人に痴漢行為を働いた男を現行犯逮捕、などという場合なら「女性巡査」と報道することが意味をもつのは確かであろう。しかしながら、「道交法違反(当て逃げ)などの疑いで書類送検」というこの事案に関して「巡査の性別」にいったい何の意味があるのだろうか。

 実は、捜査車両2台が個別にスピード違反(6月18日)、副署長が私用バイクで悪質スポード違反(7月12日)など、京都府警では交通違反系の不祥事が続発している。副署長の件へのさらなる追求などをかわす狙いで、この件をマスコミ対策の「ネタ」として差し出したという "疑い" を持たざるを得ない。というのは、後掲の記事にあるように、接触事故は5月2日、巡査は6月18日に依願退職しており、今になって発表する必然性など全く無い古い事案だからである。
 しかも、全ての記事に共通に出現していることから見て、京都府警の記者発表においても「女性巡査」が強調されたのだと思われるのである。

 概要を、最も詳しい京都新聞記事から引用する。
<京都府警中京署地域課の20代の女性巡査が、パトロール中にオートバイで駐車車両に接触し、事故を申告しなかったとして、道交法違反(当て逃げ)などの疑いで書類送検されていたことが17日、京都府警への取材で分かった。送検は6月8日付。巡査は同18日に本部長訓戒の内部処分を受け、依願退職した。(一部)>

 実は、産経新聞の記事については別の大きな問題がある。
 京都新聞、時事通信の記事では、冒頭に「20代の女性巡査」と記した後は全て「巡査」としている。ところが、産経新聞の記事だけは冒頭の「20代の女性巡査」の後、記事全体にわたって当該の巡査のことを「女性」と表記しているのである。(下に示す。記事中の赤字は筆者)
 この巡査は6月18日に退職するまで「京都府警巡査」であったし、当日は「巡査としての職務」の遂行中に接触事故を起こし、退職前には府警の警察官として処分を受けているのである。
 その人物を全て「女性」と表記するような記事を書く記者、その記事を敢えて公開させるデスク、産経新聞のジェンダー的歪みは恐るべきものである。

「頭が真っ白になって逃げた」 京都府警の女性巡査がパトロール中にあて逃げ
産経新聞 7月17日(金)23時24分配信

 京都府警中京署地域課に所属する20代の女性巡査がパトロール中にあて逃げしたとして、道交法違反容疑で書類送検されていたことが17日、捜査関係者への取材で分かった。府警は6月18日付で本部長訓戒とし、女性は同日付で依願退職した。
 捜査関係者によると、女性は5月2日午後8時半ごろ、京都市中京区の市道で公用オートバイでパトロール中、駐車していた軽乗用車に接触。そのまま逃走したという。
 事故を目撃した通行人が翌日、中京署に通報し発覚。府警監察官室によると、女性は「頭が真っ白になって逃げてしまった」と話したという。
 府警は6月8日に道交法違反容疑で書類送検。京都区検が略式起訴し、京都簡裁が罰金5万円の略式命令を出した。監察官室は「職務倫理教養を徹底し再発防止に努める」としている。


 
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 ■2015年06月02日:年金機構で起きたこと

 日本年金機構が「サイバー攻撃」を受け、125万件の個人情報が流出する、という事件が起きた。
 例によって、大手マスコミの報道には、専門知識〔さほど "特殊" なものではない)の不足、官庁側の会見・発表の無批判なやれ長し、が甚だしい。

 第一に、「攻撃」「悪意の」と言ったことばを使うことで、あたかも強烈な "サイバー・テロ" が仕掛けられ、年金機構側は「被害者=敗者」であるかのように伝えている。セキュリティの "甘さ" について、通り一遍の批判はしているものの、後述するような根本的な欠陥について言及している記事は、これまでのところ見当たらない。
 第二に、 "この時期に起きたこと" の意味について、充分検討している気配も無い。

 第一の、「根本的な欠陥」とは以下のようなことである。
 事件は、複数の職員宛に「ウィルス添付のメール」が送り付けられ、それを開封したためにスパイ・ウィルスに感染、個人情報が "吸い出された" ということである。
 このことは、年金機構では国家規模での国民の安全に関わるような重大な情報を扱う情報システムと、個々の職員がメールをやりとりするレベルの情報システムが、 "直結" あるいは "混合" していたことを意味する。
 業務系の情報ネットワーク・システムについて知識・経験の無い人は気づかないかも知れないが、今日では、情報システムのセキュリティの根本は、如何に "遮断" するか、 "通りにくく" するか、ということである。上記のような全くレベルの違うシステムを "分離" していなかったことは、およそあり得ない非常識な事態、体制であったと言わざるを得ない。
 繋がっていれば必ず漏れる。だから、「切り離しておく」のが常識なのである。

 第二に、「この時期」の意味は、犯人の側をイメージして見れば簡単に想像できる。
 国民総背番号(今回は "マイ・ナンバー" などという気色の悪いカタカナ語で呼ぶことを強要しているようだ}が秋にもスタートすることに "対応" していることは明らかではないか。
 このような「唯一の共通コード」のシステムを実用化するためには、当然、これまで使われてきた様々な「各種の個人コード」を変換・結合して、情報を集約しなければならない。そして、この段階が最も難しく、かつセキュリティの面で脆弱な作業になるのである。
 だから、その「各種の個人コード」の中で最大の年金番号を手に入れておけば、次の段階の「国民番号」も比較的容易に手に入ることになる。そうなれば、年金だけではない、運転免許やパスポート、いくつかの国家資格の情報などまで "手が届く" ことになるのである。
 「国民が便利になる」ことばかりが唄われているが、サイバー犯罪者にとっても大きなチャンスとなる時期が迫っているということである。


 
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■2014年06月24日:「見出し」の悪意

 6月21日、指宿市(鹿児島県)のJR線で土砂崩壊があり、直撃された観光列車が脱線、重傷を含む複数の負傷者が出る事故があった。その後、この列車の運転士が、現場写真を無料通話アプリ LINE で知人ら向けに投稿していたことが発覚した。

 この問題について、6月23日夜の検索サイト Yahoo のトップ画面では、次のような見出しが表示された。

「脱線直後に運転士がLINE投稿」



 これは言語道断である。(乗客に)重傷者まで出ており、しかも高齢者の多い乗客の救護にも当らず、現場写真など撮影し、それをLINEで "知人" に送っていたとは。そんな "ふざけたヤツ" が運転するから事故も起きるのだ!
 この「見出し」を見た人々の多くが、上記のように感じたであろう。JR北海道に続いて、今度はJR九州か、もういいかげんにしろ・・・等々 早速この運転士の実名や写真を "晒して" 、叩きにかかっている人々が居るかもしれない。

 ともかくリンク元である FNN の本文を読んで見よう。



 やはり、次のように記述されている。
「・・事故直後に撮影した現場の写真を、無料通信アプリ「LINE」に投稿していた・・」
 この文章は、厳密には "ウソは書いてない" のだが、いくつかの重要な「事実」を書かないことで、きわめて "危ない" 記事となっている。試しに、この文の句点(、)の位置を変えてみよう。
「・・事故直後に、撮影した現場の写真を無料通信アプリ「LINE」に投稿していた・・」
 より明確になったとは思うが、こちらの文章は "事実と異なっている" のである。

 では、先の文は「何が正しい」のだろうか。本稿の最後に読売新聞の記事を引用して示すとおり、運転士は確かに「事故直後に撮影した写真」の一部をLINEに投稿したのだが、投稿したのは「事故直後ではない」のである。
  FNN の記事は、投稿の「時間」について表記しないことで、読み方によっては誤解を与える、あるいは誤解に誘導する表現となっている。そして、Yahoo の見出しはまさに「その方向で」曲解した内容を記載したのである。

 もちろん、一段落した後とはいえ現場写真の私的投稿などもってのほかであり、当然JR九州も処分するとしている。
 しかし、事故の原因は自然災害であり、施設管理者・運転管理者はともかく一運転士にはその責任はない。現場写真も業務命令で撮影したものであり、事故現場においてこの運転士は批判・非難されるべき行動は何もとっていない。
 ところが、先にも述べたように、Yahoo トップ画面におけるこの「見出し」は、運転士に対する過大な社会的バッシングを招く可能性をもっている。「まとめサイト」による記事内容の単純化・過激化、あるいは誤解・曲解が問題として認識され始めているが、Yahoo のような大手ポータルサイトのこのような「見出しテロ」的表現の危険度もより重大であると考える。
 
 脱線事故の運転士、現場写真をLINEに投稿
読売新聞 6月23日(月)22時45分配信
 
 鹿児島県指宿(いぶすき)市のJR指宿枕崎線で21日に起きた観光特急列車「指宿のたまて箱」の脱線事故で、この列車の男性運転士(28)が事故当日、社内用に撮影した現場写真を、無料通話アプリ「LINE(ライン)」で知人ら向けに投稿していたことがわかった。
 JR九州は就業規則違反にあたるとして、運転士を処分する方針。

 同社鹿児島支社によると、運転士は事故後、状況把握のため現場写真を送るよう会社から指示を受け、土砂が流入した車内の様子などを私有のスマートフォンで撮影。同日昼に複数枚を送信した。
 その後、同日午後5〜6時頃、職場から、少なくとも1枚をLINEで知人ら約20人が登録されているグループに投稿。「死ぬかと思った」との感想も送ったという。
 同支社は23日に運転士から聞き取り、確認した。運転士は「友人1人に送ったつもりが、グループ全体にわたっていた。認識が甘かった」と話しているという。


 
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■2010年05月10日:「取調室の禁煙化」に関する毎日新聞の記事

 警察署内の「取調室」に関する記事というのは珍しいのだが・・・実にお粗末な記事である。
 はっきり言って、この合田月美という記者はジャーナリストに求められる「想像力」のかけらももっていないか、あるいは自分自身がヘビースモーカーなのだしか考えられない。
 
 なぜなら、この記事では「タバコを吸わせること」と「円滑な取り調べ」とを無条件に結びつけ、法律が "出来てしまったこと" に困惑する現場、という視点でしか見ていないからである。
 この記事を読む限り「被疑者」の圧倒的多数は喫煙者であり、タバコ欲しさに素直に自供することも少なくない、という設定が暗黙かつ無条件に行われている。
(ここでは示せないが、記事にはまさにそのことを露骨に暗示するイラストまで添えられている)

 しかし、成人全体の中での喫煙者は非喫煙者よりもかなり少ないのであり、犯罪を犯すことと喫煙との関係も実証されてはいない。だとすれば、取り調べを受ける「被疑者」の中にもタバコを吸わない者、タバコの煙が嫌いな人間は少なくないはずである。
 引用記事の中にある警察庁の幹部の発言(青字)は、この点に関してきわめて重大な事実を示しているのだが、この記事(記者)はただ流してしまっている。
 司法機関において、というか国民意識の大勢において「推定無罪」の原則がほとんど無視されているこの国の現状からして、被疑者の側から取り調べの警察官に「タバコを吸うのは止めてくれ」などと「要求」できるであろうか?
 記事末尾の補足説明(赤字)にあるように、「調べ官の足が容疑者に当たったり、机が激しく動く」ような "取り調べ" が行われるのであれば、「嫌がる被疑者にタバコの煙を吹きつける」ような行為も十分考えられるのではないだろうか。
 山梨県警は「禁煙が容疑者の権利を侵害する」ことを心配しているそうだが、「ヤニ臭い取調室に閉じこめられることや取調官の喫煙が、被疑者の人権を侵害する」ことについてはどう考えているのだろうか。この記事はそういったことに全く触れていないのである。

 私は、毎日新聞が日常多くの優れた取材・記事を見せてくれる新聞であると評価している。また、巨大な読売、朝日に対抗する "第三極" として頑張ってくれることに、大きな期待をもっている。それだけに、残念な記事だと思う。


取調室禁煙:消えゆく「1本吸うか」…15都道府県警実施
  「刑事さん、1本吸わせてくれよ」「悪いな、禁煙なんだ」。取調室を禁煙にする動きが各地の警察で広がっている。警察庁によると、これまでに15の都道府 県警が取調室を禁煙にした。公共スペースの禁煙の動きが取調室にまで波及した形だ。4月には警察庁が取調室の禁煙の検討を全国の都道府県警に通達で要請し た。だが「容疑者を落とす小道具としてたばこは必需品」などと、捜査への支障を心配する声は現場に根強い。果たして取調室の禁煙は全国に広がるのかーー。 【合田月美】
 07年4月、愛知県警が、本部庁舎の建て替えをきっかけに取調室を全面的に禁煙にした。これを皮切りに禁煙化が各地で進む。警察庁によると、現在、警視庁と岩手、福島、富山、石川、福井、神奈川、岐阜、三重、滋賀、大阪、山口、沖縄、北海道の各道府県警に及んでいる。
  警察に逮捕された容疑者は「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」に基づき、自費で購入したたばこを留置場の決められた場所で吸うことができ る。喫煙時間や本数は警察署長の権限で制限され、留置場管理を担当する警察官が監視する。03年に「健康増進法」が施行され、不特定多数が出入りする公共 スペースの禁煙化が進んだ。警察施設も例外ではないが、取調室は不特定多数が出入りする場所ではなく、「聖域」となっていた。
 警察庁は昨年11 月、全国の都道府県警の留置場管理部門と刑事部門を対象に取調室禁煙化の賛否を問うアンケートを実施。留置場管理部門は全都道府県警が賛成する一方、刑事 部門は一部の「態度保留」を除いて賛否が半々に分かれた。刑事部門に残る抵抗感が浮かんだ結果だが、警察庁総務課は「社会的な流れもあり、捜査優先だけを 理由に取調室を聖域化するのはどうか」と話す。
 09年8月に禁煙にした石川県警は「捜査員も『心配したほどの支障はなかった』と話している。取 り調べの適正化も一層進む」と話す。未実施の山梨県警は「禁煙が、法令で定められている容疑者の権利を侵すことにならないかを含めて検討中」という。千葉 県警のあるベテラン捜査員は「たばこは容疑者の緊張をほぐすのに欠かせない。禁煙にすると取り調べがやりにくくなる」と言う。一方、警察庁のある幹部は「取調室の禁煙に反対するのは、捜査員自身が吸いたいという実情もあるのではないか」と話している。
 ◇取調室◇
 国家公安委員会規則で、容疑者の逃走や自殺の防止、換気や防音のための適切な設備を整えるよう定められている。机をはさんで調べ官と容疑者が向き合って座り、調べ官には補助者がつく。「取り調べの適正化」に取り組む警察庁は、09年度に約3億6000万円を投じ、机の下に遮へい板を取り付けたり、机の脚を床に固定する措置を講じた。調べ官の足が容疑者に当たったり、机が激しく動くのを防止するのが目的だ。
毎日新聞 2010年5月10日 15時00分(最終更新 5月10日 17時24分)


 
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■2009年09月20日:「朝青龍ヒザげり報道」の悪意と欺瞞

  昨日(19日)の取り組みで横綱朝青龍が玉乃島を破ったのだが、相手の後ろから「送り出し」を決める際に "膝を使って押し出す" 動作があった。
 相撲の規則で禁止されているのは胸や腹を蹴ることだけで、それ以外の部位については禁じていない。そもそも「蹴たぐり」や「蹴返し」という決まり手さえ存在するのである。
 また、 "組み合う" ことを中心とする格闘技においては "手足を使って相手を殴打する" ことは厳しく禁じられるのが一般的であるが、相撲には「張り手」という技がある。以前に、まるでグローブのように分厚いバンデージを巻いた手で、相手の顎やこめかみを狙ってKOする力士が現れ、それは行き過ぎとして厳重注意・禁止されたが「張り手」という技自体は現在も認められている。
 今回の朝青龍の「膝押し出し」など、話題にするとしても彼の集中力、勝利への執念の現れという肯定的な見方しかできないのであり、ことさらに "批判" するというのは単なる悪意の表出に過ぎない。
 下に示すのは、20日午前の Yahoo News に表示された見出しの一部であるが、最近のスポーツ紙の "やり口" の汚さ・醜さが凝縮されているのが良くわかる。

ニュース
* 朝青“右ヒザげり”に抗議電話が殺到(デイリースポーツ)20日 - 9時23分
* 朝青ひざ蹴り!?7連勝も抗議殺到…秋場所7日目(スポーツ報知)20日 - 8時0分
* 朝青龍、ウラ技?背後から右ひざ蹴り/秋場所(サンケイスポーツ)20日 - 7時52分
* 朝青 おきて破りのひざ蹴り出し!(スポニチアネックス)20日 - 7時5分

 第一に、相撲協会幹部が「問題ない」と明言していることを記事本文には書きながら、見出しではそれを無視して、「ウラ技」だの「おきて破り」だのとあたかも朝青龍が反則技を使ったかのように書き立てていること。
 そして第二に、「抗議電話が殺到」とあるが、記事本文を読むとかかった電話は "30通" だというのである。全国どころか海外にまで同時放送されている番組に、30通の電話がかかったことを "殺到" というのは、明らかに意図的な誇張である。
 単なる「好き嫌い」や「人種偏見」からターゲットを選んで攻撃し続ける、そのためには "読者を騙す" ことも平気で行う、朝青龍本人が「またおまえら面白おかしく書くんだろ」と言うのも当然である。
 全部とは言わないが、この国のスポーツ・メディアの下劣さにはヘドが出る。


 
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■2009年06月11日:誰に "謝る" のか?

 3月23日に書いたフェデックス事故の記事と、 "根" がまったく同じ問題が別の形で出現した。
 絵に描いたような冤罪がやっと認められた(でもこの年月は戻ってこない)足利事件の菅家氏の "ことについて" 、検察幹部が記者会見を開いて(記者たちに向かって)謝罪した、という。
 記事の中でも、この幹部が「菅家さん本人に対しては今後、直接謝罪する意向を示した。」と当然のように書いていて、記者がそのことに何の疑問も感じていないことがわかる。

 
足利事件:最高検・伊藤次長検事が謝罪
 90年に4歳女児が殺害された足利事件で再審開始が決定的になり17年半ぶりに釈放された菅家(すがや)利和さん(62)について、最高検の伊藤鉄男次長 検事は10日、記者会見し「真犯人と思われない人を起訴し、服役させたことは大変申し訳ないと思っている」と謝罪した。過去の冤罪(えんざい)事件で地検 の次席検事が謝罪コメントを発表した例はあるが、最高検によると、最高検幹部が謝罪した例はないという。
 伊藤次長検事は東京高検に対し、速やかな再審開始決定と再審公判での早急な無罪判決に向け、適切な対応をとるよう指示したことも明らかにした。
 東京・霞が関の最高検で会見した伊藤次長検事は謝罪のコメントを読み上げた後、再審開始前の異例の謝罪について「検察として頭を下げるということ。それに基づき高検に指示をした」と説明。菅家さん本人に対しては今後、直接謝罪する意向を示した。
 東京高裁は近く再審開始決定を出す見通しで、その後、宇都宮地裁で再審が始まることになる。検察側は再審公判で無罪論告を行うとみられる。【岩佐淳士】
 (毎日新聞 6月10日)


 
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■2009年04月15日:見出しテロ" に画期的判決

 画期的な判決ではないかと思う。
 これまで、「見出し」だけに一方的な誹謗中傷的文言を書いておいて、本文では「・・・というような批判もあるが、さて真相はどうなのだろうか?」などと 逃げる悪質な記事が野放しにされて来た。
 「本文をちゃんと読んでもらえれば、そんなに一方的なことは書いてない」などという居直り的反論がまかり通ってきただけに、この判決の「中吊り広告や新聞広告を見た人の多くは雑誌の記事まで読むことはないため、記事とは別に広告の内容だけで社会的評価を下げるかどうか判断すべきだ」という指摘は大変重要かつ意義のあるものである。
 特に選挙が近づくと、野党の有力な政治家や野党政党そのもの、政府に批判的な言論人などを標的としたこの種の「記事」が突然増えることで、週刊新潮、週刊文春の2誌は際立っていた。
 この判決で、これら週刊誌のプロパガンダ戦略は大きく制約されることになる。それとも控訴して徹底的に戦うのだろうか?


新潮社に賠償命令 陸上・為末選手の名誉棄損認める
 週刊新潮に掲載された詐欺に加担したかのような印象を与える記事で名誉を傷付けられたとして、陸上の世界選手権400メートル障害銅メダリストの為末大選手(30)が発行元の新潮社などに4500万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が15日、東京地裁であった。畠山稔裁判長は為末選手の訴えを認め、新潮社に約220万円の支払いを命じた。
 判決によると、同誌は昨年4月10日号に「『詐欺の片棒を担いだ』と告訴されるメダリスト『為末大』」との見出しで記事を掲載。
 記事は為末選手が詐欺疑惑を持たれている投資ファンドの所属選手であることを指摘し、同ファンドの広告塔的な役割を果たしていることを問題視した。しかし、実際には為末選手は告訴されなかった。
 畠山裁判長は判決で、「中吊り広告や新聞広告のを見た人の多くは雑誌の記事まで読むことはないため、記事とは別に広告の内容だけで社会的評価を下げるかどうか判断すべきだ」と指摘した
 その上で、「中吊り広告などにある見出しが断定的で、真実ではない。あたかも詐欺行為に加担したとして告訴されたという印象を見た人に与えた」と指摘し、名誉棄損を認めた。
  (MSN産経ニュース 2009.4.15 20:13)


 
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■2009年03月24日:フェデックス事故の続報

 フェデックス事故の続報が出た。
 相変わらず。時事通信の関心は、被害者と言う側面ももつフェデックス社が "自分たちの前で" 謝罪したかどうか、という一点に絞られているらしい。何とも不気味で、不愉快な態度である。
 これは、言うまでもなく "航空事故" である。仮にあの瞬間、貨物機ではなく満員の客を乗せた旅客機が進入していた場合を考えると身の毛がよだつ。
 地上で瞬間風速21メートルを記録していたという報道もある。微細な気象状況の観測体制、そのデータの伝達システム、管制塔とのコミュニケーションの実際など、成田空港側についても改めて調べ、考えなければならないことが山積しているではないか。
 それらを何も伝えず、問題提起もしようとせず、フェデックス社の "態度" しか報道しない。この通信社は、読者をどこに誘導しようとしているのだろうか。

「ご迷惑お掛けした」=フェデックス社が謝罪会見−成田
 米貨物航空会社フェデックスは23日午後、成田空港内で2度目の記者会見を開き、氏家正道北太平洋地区担当副社長(41)は「事故により従業員が巻き込ま れ、悲しい日となった。空港関係者や利用客などいろいろな方にご迷惑をお掛けし、心よりおわび申し上げる」と謝罪した。
 着陸に失敗して炎上した機体について同副社長は、過去の事故や欠陥は「知る限りではない」と回答。しかし、積み荷の中身や当時の気象データの把握状況など具体的な情報は「調査中」を繰り返した。
3月23日18時3分配信 時事通信


 
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■2009年03月23日:フェデックス事故の報道

 この国で最近目立っている不愉快なことの一つ。
 何か問題が起きたときには企業や官庁は記者会見を開く。ところが、その際に必ず全員が起立して会見相手、すなわち報道各社の記者たちに向かって深々と頭を下げ、そこでフラッシュが一斉に光るというののが、当然の "儀式" のようになっている。
 何か過失があって、特定の人々や企業に損害や迷惑を掛けたのであれば、その相手に対して責任をとる、求められれば謝罪するのは当然である。ところが、どう も "それ以前に" 報道機関に対して謝ることが慣例化し、メディア各社(の記者たち)もそれを当然と思っているようなのである。
 下記の時事通信の記事では、はしなくも見出しにその "本音" が露出している。
 冷静に考えればフェデックス社の言っていることには何の問題も無く、そもそもこの段階で記者相手に謝罪する理由など何もないのである。
 勝手に「全国民を背中に背負った気分」になって、正義の味方を気取って一方的に相手を断罪するような態度は、一種のファシズムの始まりと言っても過言ではない。

謝罪の言葉なく=フェデックス社が会見−貨物機炎上
  米貨物航空会社フェデックスは23日正午ごろ、氏家正道北太平洋地区担当副社長が成田空港内で会見を開いたが、「状況の詳細をまだ把握できていない」と繰 り返し、約10分で打ち切られた。謝罪の言葉を求められても、「現時点では調査中で申し上げられない。情報が入り次第、会見を開いてお知らせする」と話し た。
3月23日13時6分配信 時事通信


 
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■2009年03月22日:米下院に関する報道の中で

 以前にも書いたことがあるが、日本のメディアは日本の "政治文化" の歪みに関する基本的かつ重要なことを伝えないばかりか、その歪みを増幅し固定化させていることが少なくない。
 例えば、今話題の「AIG のボーナス問題」でも、オバマが怒った、とか "街の人の声" などの散発的な報道の他には「議会下院でスピード決議」とあっさり済ましてしまっている。
 ここでとりあげるのは、AIG 問題そのものではない。
 議会で、この法案に賛成し・可決に至らしめた議員の政党構成についてである。与党である民主党は大部分の議員が賛成しているが少数ながら反対した議員もいる。野党共和党ではほぼ半分に割れる結果となっている。
 さて、少数の反対した議員について民主党では "除名" 騒動が起きているだろうか? また、共和党は "分裂" の危機にあると報じられているだろうか?
 いずれも "NO" である。
 しかし日本で同じ状況になったらどうだろうか?
 自由民主党は本来多様性をもつ "幅の広い政党" であった。戦後ずっと一党で政権を執りつづけながら、独裁的暴走に至らなかったのはそのためである。
 ところが小泉純一郎氏が総裁になってやったことは、郵政民営化を梃子とするその多様性の完全否定であり、メディアもその手先となって "造反議員" などと馬鹿げた言葉を連発したのである。
 厳正に独立した政治家であるべき議員が、党首の言いなりにしか発言しない "票" でしかないのであれば、二大政党制など機能しない。しないどころか、51対49でも一党独裁と変わらぬものになってしまうのである。
 日頃の政治信条と正反対の行動をしたのなら、また自分の支持者を裏切ったのなら、 "造反" という表現も有り得る。たかが政党の党首(国会議員としては対等だ!)や党の幹部議員と意見が異なったからと言って、メディアが "造反議員" などと呼ぶこと自体が極めて異常なデモクラシーを否定する行為なのである。

AIG賞与 「税率90%」適用 米下院 支援受けた大銀行も
 【ワシントン=渡辺浩生】公的管理下で経営再建中の米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が社員に支給した高額賞与をめぐり、 米下院は19日、90%という異例の高税率を適用する法案を可決した。強い批判を浴びている高額ボーナスの大半を国庫に取り戻すことを目指しており、公的 支援を受けた他の大手金融機関も対象としている。上院も同様の法案を準備しており、上下両院は早期成立を図る構えだ。
 法案は賛成328票(民主243、共和85)、反対は93票(民主6、共和87)で可決された。オバマ大統領が16日に「あらゆる法的手段を使って支給を阻止する」と強い姿勢を表明してからわずか3日後のスピード可決となった。
 課税の対象となるのは50億ドル(約4900億円)以上の公的支援を受けた企業で、世帯年収が25万ドル(約2450万円)以上の従業員が1月以降に支給 された賞与。適用されれば約1700億ドルの公的支援を受けたAIGだけでなく、シティグループやバンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックスなど他 の大手金融機関のほか、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)など政府系住宅金融2社も対象となる。
ーーーー以下略ーーーー
 3月21日7時57分配信 産経新聞


 
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