地理・地図・GIS_1

( Quora アーカイブ 2018〜2019)


 

2019年11月05日:赤道に近いことを、「直下」というのはなぜですか?

2019年08月17日:伊能忠敬の日本地図はどのような事に役立ちましたか?

2019年07月18日:東京から地球上を東に行くとどこに到達しますか?

2019年07月11日:日本には地図に書かれていない村が沢山ある?

2019年06月12日:地図はなぜ北を上にすることが多いのでしょうか

2019年06月10日:地図情報システム(GIS) とは何? 何の役に立つの?

2019年05月20日:「赤道直下」ではなく「赤道直上」が正しいのでは?

2019年05月15日:地図の海岸線は、満潮時、干潮時のどちら?

2019年04月01日:グーグルマップの精度が下がったと感じますか?

2019年03月11日:地図が読めない人がいるのは何故でしょうか?

2019年03月04日:Googleの地図化はすべての道路を運転して回った?

2019年02月13日:山の高さを表す「海抜」と「標高」 どうちがう?

2018年09月18日:将来カーナビはスマホやタブレットで代替される?

2018年06月30日:湖が県境のケースはありません。なぜですか?

2018年06月27日:赤道から両極に移動するにつれて、緯度の長さは?

2018年06月26日:地図上にある格子状の線はどう役立っているの?

2018年05月06日:日本列島を移動させることが出来たら、どこがいい?

2018年04月22日:磁気子午線と地理的子午線とのなす角度は?

2018年04月11日:近世までの日本、なぜ知識や技術が体系化されず?

2018年03月05日:衛星が存在する前、地図はどのように作られた?


 
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 ■2019年11月05日:

Q:緯度の基準になる赤道に近いことを、「直下」というのはなぜですか?

 以前にあった類似の質問への回答を少し修正して回答します。
 古代中国の天文学で、太陽が真上を通るとされる地点を天球図に赤い線で描いたのが「赤道」という名称の由来です。
 つまり、始まりは測量によって定められる「線」や国境線などと異なって、言わば「天を見上げる」ことから認識されたものだったのです。
 また、近代的な定義においても、赤道(=緯度0度の線)は「地球の重心を通り、自転軸に垂直な平面が地表面と交わる線」という定義であり、土星の輪のような薄い平面をイメージできるのではないかと思います。
 これらのことから、赤道は「地面や海面に想定される線」というよりも「天から投影される線」という感覚が強く、「赤道直下」という表現が定着したのだと思います。
 なお、現代では厳密に言うと赤道が「緯度の基準になる」のではなく、「緯度0度の地点を結ぶ線」を「赤道」と呼んでいる、ということです。


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 ■2019年08月17日:

Q:伊能忠敬の日本地図はどのような事に役立ちましたか?

 それについては、様々な事実無根の「風説」が近年とくに目立ちますので、少し長くなりますが丁寧に説明したいと思います。
 伊能忠敬の測量による「大日本沿海輿地全図」が完成し幕府に上納されたのは文政四年(1821)です。全体では縮尺 1/432,000 の「小図」3面、縮尺 1/216,000 の「中図)」8面、縮尺 1/36,000 の「大図」 214面、の合計 225面にのぼる地図集とその測量原簿にあたる「大日本沿海実測録」14卷を合わせた膨大なものでした。
 これらは幕府によって即時「国家機密」とされ、同様の地図が民間に出回ることはありませんでした。江戸後期から明治初期にかけて民間に普及していた日本地図は、安永八年(1779)に水戸藩の学者長久保赤水が資料を基に編集作図した「改正日本輿地路程全図」で、改訂を重ねながら木版印刷されて広く普及していました。
 伊能図が国内で初めて公開されたのは、慶応三年(1867)に幕府の開成所が上記の伊能小図を元に北方地域の情報を加えて発行した「官版実測日本地図」です。海岸線が正確に描かれていることから沿岸航海にとっての貴重な地図となり、維新後の明治3年(1870)には大学南校から再刊され、同時に「大日本沿海実測録」14卷も刊行=一般公開されました。
 伊能測量は、忠敬をはじめとする人々の超人的な努力で高い精度を保ってはいましたが、当時のヨーロッパで実用化していた三角測量と比べると「一時代前の技術」による不完全なものでした。このため、明治新政府は全国の三角測量・地理調査を実施することとしますが、近代測量が全国をカバーする以前に各地域や島嶼の面積を計測、統計の基礎とするなど、国内行政の基本を構築する必要がありました。そのため、明治17年(1884)陸軍参謀本部測量局は「輯製二十万分の一地図」の作成に着手、明治26(1893)年までに全国を完成させました。この地図は「伊能中図」を元に内陸の空白部分は資料によって補完して作成されたものでしたから、伊能図は明治前半の日本で重要な役割を果たしたと言えます。
 一方、伊能小図に関しては様々なルートで「海外流出」し、海外で "活用" された事実があります。その最初はドイツ人医師シーボルトによるもので、伊能小図をさらに縮小・複製し、カタカナ注記をつけた「特殊小図」と呼ばれるものです。これは1828年ヨーロッパに持ち出され、32年から刊行された全7巻の『日本』に収録されました。ただ、当時のヨーロッパではカラフトが島か大陸の半島かということに関心が高く、間宮海峡に関する記載の方が注目されました。
 また、幕末の文久元年(1861)に来日した英国の測量艦隊に、伊能小図の写しが手渡され、持ち帰られた地図と1855年刊行のクルーゼンシュテルンの測量図などと合わせて1863年には英国海軍による「日本と朝鮮近傍の沿海図」が刊行されています。この図は日本に逆輸入され、勝海舟によって加筆・編集されて慶応三年(1867)に「大日本国沿海略図」という木版印刷図として一般に刊行されました。政府が上記の「官版実測日本地図」を公開する契機の一つになったと推察されます。
 この英国艦隊の件について「(伊能図の)あまりの正確さに驚いて測量を諦めた」などといった風説がありますが、事実は日本列島の外形についてクルーゼンシュテルンの図と大きな相違が無く、沿岸部の詳細と地名が解るものであったので、それ以上の測量を不要と判断したものです。先にも書いたとおり、諸外国の驚きはあくまでも「一時代前の幼稚な技術で、よくここまで測量できたものだ」というもので、 "世界最高のレベルだった" などというのは「ニッポン凄い」系の後年の創作です。


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 ■2019年07月18日:

Q:東京から地球上を東に行くとどこに到達しますか?東京で東を向く大円を飛ぶとブラジルに着きます。常に北極が左手にあるように東に進むとカリフォルニアあたりに上陸します。「東」とはどこのことでしょう?

 結論を先に書きますと、「東」という場所はどこにも存在しません。
 地球は、少しブレながらですが一定方向に回転を続けている球体です。そこで、我々の先達はその「回転の軸」を想定して、その「回転軸が地表と交わる地点」を北極と南極と決めました。そして、地球上の各所から北極と南極の方向を示す線を設定し「子午線」と名付けました。つまり、地球上のどこからでも「北に向かってまっすぐ」進めば必ず北極点に到達することになったわけです。
 そして人類は、北極星(南十字星)に加えて「方位磁石」を使い、質問にあるように「進む方向と北方向との角度」で決めながら遠洋航海をするようになったのです。そこで、各子午線と常に直角に交わる「緯線」を設定しました。こちらは子午線と異なり、地球を水平にスライスするように設定されました。すなわち、地球上の任意の場所で「北方向から時計回りに90度」の方向が「東」なのであって、「東極」も「西極」も存在しませんから、「 "東" とはどこのことでしょう」という質問には答えが無いのです。
 次に、「東京から東に行くと・・」という問題ですが、簡単に言うと「(東京で)東に方向を固定して一直線に進む」のと、「(絶えず)東へ・東へと方向を確認して進む」のとの違いです。前者の場合は、東京を離れた瞬間から進む方向がどんどん東からずれて行きますので、正しくは「東に行く」のではないことになります。ただし、この問題は出発地が東京だから起きることであって、例えばシンガポールの南の海上の赤道直下から出発すれば、どちらも同じコースを辿ることになります。


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 ■2019年07月11日:

Q:なぜ日本には地図に書かれていない村が沢山あるのですか?

 とりあえず、「沢山あるのですか?」については、「いいえ、ありません」というのが答えです。行政区域として実在しているのに、公式の地図に記載されないということはあり得ません。もしもそんなことがあれば、その「地図が誤り、またはインチキ」だということです。もちろん、ただの風説に過ぎない「架空の村」が地図に載ってないのは当然で、敢えて言うまでもありません。
 ただし「市町村合併」を異常に繰り返した結果、単純に「村の名前」ということであれば(吸収合併されて)消えてしまったものは無数にあります。しかし、行政組織としての村の名前でなくなったと言うだけで、地名そのものが直ちに地図から消えるわけではありません。例えば、引用されている記事でとりあげている甲頭倉や向之倉などの集落(跡)は、日本の地図の基本となる国土地理院の地形図には「きちんと記載」されているので、記事中の「地図には載っていません」というのは全くのウソです。まさか、グーグル・マップが最も信頼できるなどと思い込んでいることはないと思いますが。
 「なぜ・・・あるのですか?」については、前提が間違っています。引用された記事には「オカルト」という副題が付いています。また、記事のタイトルの「実在」というのは「そういった "話・風説" が実在する」と言っているだけで、その "村" そのものが実在するとは一つも書いてありません。そもそも、廃村になったからと言って公式の地図を調べもせずに「地図に載ってない」と決めつけているような、単なる都市伝説的な娯楽記事なのです。
 

廃村の地名

 
 以下、2022年9月に加筆しました。
 質問が修正されて明確になったので、一部繰り返しとなりますが回答を加筆します。
 既に記したように、日本における唯一の "公式の地図" である「地形図」には全ての行政村が記載され、合併・廃村となった村についても可能な限り地域地名として記載されていますので、この質問は明らかに "誤った前提" に基づいています。このような "事実無根の誤解" が生じる理由としては大きく二つのことが考えられます。
 第一は、一般に地図と呼ぶ発行物の中に「(国家として)公式の地図」と「民間で自由に作られた地図」という性格・目的の異なる地図が一緒に含まれてしまうことです。前者が国土交通省国土地理院が刊行する「地形図」であり、現在最も代表的な後者が Google Map と言えるでしょう。 Google Map や各種のガイドマップなどが仮にどこかの村の名前を記載しなかったとしても、それは編集・発行者の自由なのです。
 第二の理由は「縮尺の問題」です。地図は限られたスペースの中に対象とする地域の "必要な情報" を "肉眼で見分けられる形で" 記載しなければなりません。仮にA3サイズの用紙に、あるいは 2400 X 1350 dot のディスプレイ上に日本地図(全図)を表示したとすると、都道府県名と代表的な都市名までが記載できる限度で、例えば「東京都に属する "全ての市区町村名" を表示すること」などは一島一市町村の離島を除いて不可能です。ディジタル地図では、情報として保持してズームアップで表示することが可能ですが、広域を表示する際には重なり合って見えなくなってしまうことを避けるために当然省略して表示するのです。つまり、ある程度広域の地図では「村の名前」が記載されてない、ということは当然起こり得ることなのです。


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 ■2019年06月12日:

Q:地図はなぜ北を上にすることが多いのでしょうか。北半球の人から見ると太陽のある南の方が「上」だったのではないでしょうか?

 地図の「北を上」にすることが一般化したのは、大縮尺の都市地図などから世界地図まで、共通の測量・座標系を用いて作成されるようになった近代以降です。それまでは、「北を上」を原則としていたのは世界地図だけで、地域単位の地図ではそうではありませんでした。
 例えば江戸時代の村絵図や城下図では「東や西を上」にしたものの方が主流です。また、それらの江戸期の地図の特徴的な表現として、「縦書きの地名や施設名を最も近い "外枠" の方向から直立させる」という描き方があります。(つまり麻雀の牌のように)これは、絵図を畳において「周囲に座って見る」という使い方と「縦書き」という表現の特性によるものです。下に示すのは徳島大学図書館が所蔵する「淡路国絵図」(1641)の一部です。

Googleonly

貴重資料高精細デジタルアーカイブ|徳島大学附属図書館

 世界図が「北を上」にした理由は明確です。そもそも世界図が求められたのは「航海用の海図」としてであり、その航海において基準とした「動かない星」が北極星だったからです。
 「南半球の大国」であるオーストラリアは、一つの主張(ユーモアを込めた)として「南を上」にした世界地図を作っており、名物の土産物として空港などで販売されています。下に示すのは同国の Mapworld社のサイトにあるものです。

Googleonly

Map Shop, Hema Maps, Maps Online - Free Shipping - Mapworld


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 ■2019年06月10日:

Q:地図情報システム(GIS) とは何ですか? 仕事で何の役に立つのですか?

 GIS は Geographical Information System =「地理情報システム」の頭文字です。( "地図情報" は誤りです)
 もともと、空間的位置(座標値)とそこに紐付けされた量的・質的情報を組み合わせて構成するデータベースと、それを維持管理・検索利用するためのシステムおよび技術の総体を示す呼称です。
 例えば「47都道府県の人口と面積」というのも最も素朴な地理情報の例なのですが、この段階では一般的には単なる統計データと思われています。しかし、全国を市区町村よりさらに小さい「町丁目別の区域」に細分し、それらの区域ごとの人口に中心位置の座標を加えた膨大なデータの集積を想像してみると、「地理情報」というイメージが少し湧いてくるのではありませんか。
 そして、「地点の位置を定める座標」の情報に加えて「その地点の地表の状態に関する様々な情報」すなわち地形や土地被覆(植生)、土地利用や土地所有といった情報が最も重要な基盤情報となるのです。国土交通省では、これらの情報のことを「国土空間データ基盤」と呼んでいます。
 実はこれまでの「地図」というのは、「取捨選択した地理情報」について地球表面上の球面座標から適当な平面座標に変換し、「記号化して図的に表現したもの=固定したもの」と定義することができます。例えば、メルカトル図法で描いた世界地図では、座標変換の関係でグリーンランドが巨大に描かれてしまいます。しかし、現代の地理情報では、位置座標は地球の球面座標で保持していますから、いわばデータ空間の中に「数値化された地球儀がある」のと同じであり、平面への座標変換の方式を選ぶことによって任意の地域について歪みの少ない地図を自由に表示することができるのです。
 この「数値化された地球儀」がそのまま画面に現れ、自由に回転させたりクローズアップすることができる最も代表的なサービスがグーグルアースです。
 もう一つ、この地理情報システムを決定的に重要な社会基盤の一つとしたのが GPS Global Positioning System =全地球測位システムの実用化です。このシステムによって得られる位置情報を様々な個票データに紐付け、地理情報と組み合わせることで、空間的な情報を含むビッグデータが生まれることになったからです。
 仕事で何の役に立つのか?という質問ですが、すでに広範囲に実用化されています、としか答えようがありません。そもそも、いわゆるカーナビが GIS そのものですし、 GPS 付きの携帯やスマホを持たせることで、子供や高齢者の行動を把握するといった使い方も出てきています。また、天気予報で出てくるアメダスも気象情報専用の GIS なのです。
 より事業的な例をあげれば、配車サービスの最適化のために導入しているタクシー会社は数多くあります。宅配業界や不動産業界でも広く導入されています。船舶用に海上保安庁が提供している「電子海図」というのも海上限定の GIS そのものです。また、エリア・マーケティングなどで顧客の分布を空間的に把握したいとき、「グーグルマップ」や国土地理院の「地理院地図」などを利用して瞬時に分布図を作るといったことも可能になっています。


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 ■2019年05月20日:

Q:よく「赤道直下」と言いますが、赤道(緯度ゼロの円周)は地面および海面を走っているのではないですか?赤道直上が正しいのでは?

 まず、「緯度がゼロの円を赤道」としたのではなく、「赤道を緯度ゼロの円」「極点を緯度90度の点」としたのです。
 近代地球科学や測地学が生まれる遥か以前から「赤道」は認識されていました。
 それは具体的には、「昼と夜の長さが、共に1年を通じて12時間である」地点であり、「春分と秋分の年2回、太陽が真上にくる」地点、その連鎖としてであったのです。
 古代中国の天文学で、太陽が真上を通るとされる地点を天球図に赤い線で描いたのが「赤道」という名称の由来です。
 つまり、始まりは測量によって定められる「線」や国境線などと異なって、言わば「天を見上げる」ことから認識されたものだったのです。
 また、近代的な定義においても、赤道は「地球の重心を通り、自転軸に垂直な平面が地表面と交わる線」という定義であり、土星の輪のような薄い平面をイメージできるのではないかと思います。
 これらのことから、赤道は「地面や海面に想定される線」というよりも「天から投影される線」という感覚が強く、「赤道直下」という表現が定着したのだと思います。


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 ■2019年05月15日:

Q:地図の海岸線は、満潮時、干潮時のどちらですか?

 「満潮時」です。
 「地形図」を所管する国土交通省 国土地理院によると、地形図の海岸線は「満潮時を表示」.

地図(数値地図)の一般的事項に関するQ&A

 「海図」 を所管する海上保安庁 海洋情報部によると、海図上の海岸線も「最大満潮時の水面を基準とし、この海面が陸地と接する線」。
海図上の海岸線
 


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 ■2019年04月01日:

Q:グーグルマップが日本の地図会社と解消の為に地図の精度が下がったようですが、そう感じますか?

 2019年の3月下旬まで、グーグルマップの基本地図データは ZENRIN という日本を代表する地図情報企業から提供を受けていました。地図画面の下の端に下記のような表示がありました。

Googlezenrin

 3月下旬に、その契約内容に(解消ではなく)変更があり、提供される( Google が使える)データ内容が削減されたようです。その結果、下の図のように地図画面下端の表示が消え、地図の(特に道路に関する)精度が「感じ」ではなく「事実」として明らかに下がりました。

Googleonly

 Google 側としては、「衛星画像を中心に様々なデータをシステム上で統合して地図情報を生成・修正する」というこれまで開発してきた手法でサービスを維持できると考えているようですが、以下の3つの理由で難しいと思います。  第一に、日本の都市では細い道路が網の目のようにつながり、一方通行や右折・左折の制限など無数にあり、その全てを外部データから把握することはほとんど不可能であること。  第二に、これまで提供されていた基本データの「道路データ」は、一地図企業が「制作」したものではなく、 国の費用で整備された「デジタル道路地図データ」という極めて精細な情報によるものであったこと。  第三に、日本人は ZENRIN の地図に代表されるような正確で精細な地図に慣れており、情報の誤りや雑な表示に対する拒否感が極めて強いこと。  Google が今後どのように進めるのか注目されます。


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 ■2019年03月11日:

Q:地図が読めない人がいるのは何故でしょうか?

 私は地理学研究者で、大学で地理学や地図学を教え、未知の土地でのフィールドワークの指導等も行ってきました。その経験に基づいて回答します。
 「地図が読めない」という場合、大きく2つの種類があると思います。一つは「そこに記されている様々な情報を的確に読み取れない」という事例で、言わば「資料」としての地図の場合です。もう一つは、自分がどこかに行こうとする際に「地図の上で自分の位置や進むべき方向を見つけられない」という事例で、方向音痴などとされる現象にも共通する問題です。この質問の主旨もこちらだと思います。
 この問題については、メディア等で上手くできない人を嘲笑するような、場合によっては性差別的な取り上げ方をされる場合が多いように思います。しかしながら、この問題は実は「経験的学習」の質・量の問題に過ぎないことが判っています。
 子供の頃からとにかく歩き回る、目的を定めず「遠出」する、迷子になっても何とか家にたどり着くといった経験を重ねて、空間的知覚とでもいうべきセンスを鍛えてきたかどうか、ということが影響するようです。男の子と女の子でそのような経験(を積む機会)に差があることが一見「性差」があるように見える原因と考えられます。
 また、そのような経験をあまりしていなくて、当初は文字通り「地図が読めない」学生でも、(男女を問わず)一緒に外に連れ出して少し「訓練」すると、問題なく「地図を使って移動する」ことができるようになりました。
 ですから、空間的な知覚を鍛えるような経験が乏しい人の場合でも、ある程度の「学習や訓練」を行うことで、実際は誰でも「地図が読める」ようになるのです。何も学習していなければ統計数値やグラフが読めないのと同様で、地図に限って「先天的にダメな人」などというのは存在しないと断言できます。


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 ■2019年03月04日:

Q:Googleは、どうやって全国を地図化しましたか?すべての道路を運転して回ったのですか?

 Travis Addair さん、フリーデンバーグ 桃紅さんの回答への補足です。
 Google Maps の日本国内について、地図をズームアップして行くと、図の右下に下記のような表記が現れます。

Googlezenrin

 この ZENRIN というのが日本国内における地図データのプロバイダです。
 この会社は、別府の温泉街の案内地図を作成した個人企業から出発して、一戸ごとの住民の氏名が記載された「住宅地図」作成に挑戦、警察や消防、自治体などのニーズに応える形で全国に展開、成長しました。
 「地図会社」ですから全国を測量できるわけではなく、他の地図企業と同様、地図の基本的骨格(位置情報)は政府機関である国土地理院が全国の地形図を作成するために行なっている「国土測量」のデータを提供してもらって地図を作っています。
 住民氏名の更新作業の合理化から、地図情報の本格的なディジタル化に最も早く着手、当初は無視されていた国(国土地理院)との関係も確立して、今日では日本を代表する地図情報企業となっています。

 3月24日加筆
 現在、この ‘ZENRIN’ の表記が削除され、同時に道路表示などに不具合が生じていることが報告されています。
 Google 側の「新しい地図データシステム」と ZENRIN のデータとの不整合が起きているのか、両社の契約変更にともなうシステム・トラブルなのか、詳細は不明です。
 また、ZENRIN が MapBox 社と新たな契約を結んだ(20日)こととの関係も注目されます。


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 ■2019年02月13日:

Q:山の高さを表すのに、「海抜」と「標高」があります。ちがうのですか? どうちがうのですか?

 日本の国土の測量・地図作成を司る「国土交通省・国土地理院」による説明です。
 国土地理院(測量法)では、東京湾の平均海面を0mの基準面としています。
 基準面からの高さを標高とよびます。
 また、近隣の海面(たとえば大阪湾など)からの高さは海抜とよびます。
 
標高と海抜と水準点|国土地理院


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 ■2018年09月18日:

Q:カーナビは衰退しているという記事を読みました。皆さんは、将来カーナビはなくなり、スマホやタブレットで代替されると思いますか?

 カーナビとは GPS 衛星を基とする位置情報決定システムと地図データベースを統合したアプリケーション・システム・サービスであって、「衰退している」などという事実はありません。参照されている記事は、単に「車載型専用端末」で利用するか「スマホ・タブレット+アプリ」で利用するかという話であって、次元が違います。
 記事の話は、現在の車載専用端末はいずれ消えて行くだろうというだけで、ワープロ専用機が消えて行ったプロセスと同じ、それはそうだろうと思います。ただ、一方で ipod のような音楽専用端末、電子辞書などが生き残っていることにも注目すべきではないかと思います。
 つまり、電子情報機器は <専用機>ー<汎用機+ソフト>ー<高度化小型化した専用機>というサイクルを繰り返す傾向があるからです。カーナビの場合も、さらに高精度の GPS レシーバーを内蔵、FM波を利用する局地的補足情報にも対応し、大画面でも軽量・低価格、あるいはフロントウィンドウと合体した透過型ディスプレイを使用するなどの、新しいタイプの専用端末が将来登場する可能性はあるのではないか、とも考えています。


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 ■2018年06月30日:

Q:川が県境のケースはたくさんありますが、湖が県境のケースはありません。なぜですか?

いいえ、少ないですがあります。

十和田湖は青森県と秋田県の県境となっています。

十和田湖

また、中海は鳥取県と島根県の県境となっています。

中湖

さらに、尾瀬沼は栃木県と群馬圏の県境となっています。

尾瀬沼

この他に、奥只見湖(福島・新潟)のように、元々は川の県境だったところが「ダム湖」となっている例も多数あります。

*地図はいずれも「地理院地図」(国土地理院)によります。


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 ■2018年06月27日:

Q:赤道から北極や南極に向かって移動するにつれて、緯度の長さは短くなりますか?

 質問の "緯度の長さ" (英語版では 'length of latitudes' )という表現が意味不明です。「緯度」は文字通り「角度」として定義されるものであって「長さ」を示す値ではないからです。何とか回答可能な形に読み替えるとすると、2つのケースが考えられます。

 その一つは同じ子午線上における「緯度差1度の地表距離」の比較です。例えば、同じ東経135度の線上で赤道附近の北緯0度の地点から北緯1度の地点の間の距離と、北緯89度の地点から90度の地点の間の距離を比較することです。この場合、詳細は(煩雑になるので)省略しますが、これまでの研究から「地理緯度差1度」の地点間の距離は、極点に近づくほど極く僅かに「延びる」ことが解っています。地球が完全な球体ではなく、赤道附近が僅かに膨らんだ回転楕円体であるためです。

 もう一つは、(緯度(latitudes)」ではなく「緯線(circles of latitude または parallels)」の長さの比較を言っている場合です。これは、極に向かって赤道(面)と平行に地球を輪切りにした場合の地表との切線なので、当然、極に向かって次第に短くなり、極点で0となります。


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 ■2018年06月26日:

Q:地図の上にある格子状の線はどのように役立っているのですか?

 地図上に描かれている格子状の線には大きく3種類の(全く違う)ものがあります。

 その一つは「緯度・経度」を示す線で経緯線とも呼ばれ、投影計算に基づいて厳密に作図されるものです。大縮尺の(狭い地域を描く)地図ではほとんど直線の格子に見えますが、小縮尺の(=描かれる地域が広い)地図では、いずれか、あるいは両方の線が曲線になる場合もあります。この線を基準に「地図上で選んだ地点の、およその緯度・経度を知る」ことができ、例えば GPS が示す位置と対比することもできます。地図専門の世界で「‘grid’ 格子」という場合はこの経緯線のことです。

 2番目は、「平面直角座標系の格子線」です。これは土木工事などで地点や線を精密に測量したり工事するための基準とするものですが、一般の人にはあまり縁がないので詳細は省略します。

 3番目は「地図上に任意に描かれる格子線」です。これは逆に「地名の索引などにその地図上のおよその位置を示す」ための便宜的なものです。縮尺と連動して現地の距離で5km、10kmといった分かりやすい間隔に設定された正方直角格子で描かれ、縦軸・横軸に番号や記号が付けられます。例えば索引で調べた地名に「7-e」と書かれていれば、その地名が地図上の格子の上から7行目、左から5列目の正方形の中にある、といった具合です。住宅地図や道路地図など、一般の人が使う地図には必ず描かれています。


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 ■2018年05月06日:

Q:もし日本列島を好きなところに移動させることが出来たとしたら、どこがいいですか?

 質問の趣旨と少しずれるかもしれませんが、参考までに。
 今ある国を潰してしまうことになるので、陸地の上に「移動」することはできませんが、移動ではなく「そっと重ねて見る」のなら良いだろうと・・・動かした図を示します。

ヨーロッパと日本

 実はこの図はある講義で学生に見せたものなのですが、狙いは日本の大きさ(長さ)を知ってもらい、考えてもらうこと。どうも、「坂の上の雲」(司馬遼太郎・NHKドラマ化)あたりの悪影響で、やたらに「極東の "小さな島国" 」と思い込まされている日本人が多いのは本当に困ったものです。図を見て貰えば解りますが、北海道の北端・稚内をドイツのハノーファーに重ねると、静岡・浜松はフランスのマルセイユ、九州はほぼスペインで、沖縄の石垣島はなんと地中海を越えてモロッコのカサブランカ附近、南北大東島はチュニジアに至るのです。(念のため、北方領土エトロフ島はポーランドです)
 日本は決して小さくはないのです。アメリカや中国、ロシアばかり見ているので「小さい気分」になるのかもしれませんが、もっとヨーロッパに注目しよう!
 もちろん、同じ縮尺、同じ投影図法(正距方位図法)で投影中心点を合わせて重ねています。


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 ■2018年04月22日:

Q:現在の磁気子午線と地理的子午線とのなす角度は何ですか?

 「子午線」と「磁気子午線」のなす角度は、一定ではなく「地点」によって異なります。
 「子午線」は球体である地球上に、北極点・南極点を結ぶように設定された円弧です。一方「磁気子午線」は磁石の針が指す方角に沿って描く円弧であって、子午線とは一致しません。
 この両者のなす角度=「偏角」は、地球が球体であるために "地点" によって異なります。現在の日本では南鳥島の「0度」以外は全ての地点で「西」に偏っていますが、磁気の北「=磁北」は時間的にも変動しているため、これが永久不変の値という訳ではありません。

参考:地磁気を知る|国土地理院


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 ■2018年04月11日:

Q:なぜ近世までの日本では、知識や技術が「学」として体系化され、専門化されることなく、むしろ「道」として精神性を帯びたものとしてしか深化されなかったのでしょうか?

 江戸時代、全ての分野の知識や技術が「学」として全く体系化・専門化されていなかった訳ではありません。ただ、後述するような事情で、学術的な体系化・専門化が充分には進まず、「道」や「派」などの「家の芸」になってしまう分野があったことは事実です。詳しく書いていると「本一冊」になってしまうので、ここでは、天文学・地理学を中心に要点だけを列挙します。

 1.江戸時代、近代的な科学技術の始まりの多くは、初期には中国からの、後年にはオランダを経由してヨーロッパ各国から輸入された書物の購読、翻訳を出発点とした。大きな転換期となったのは、八代将軍徳川吉宗による蛮書解禁(キリスト教の布教に直接関わらない西洋の書物の輸入・所持を認めた)であった。
 2.したがって、実際に学術研究・技術開発の主体となったのは、西洋の学術に直接触れることができた通詞(通訳)達に始まり、次に興味に即して書物を購入できる富裕な商家・町民が続き、さらに関心をもった大名に指名された若手の武士・用人へと拡がって行った。
 3.特異だったのは、日本独自の「和算」が既に高いレベルにあり、「算額」といったやや趣味的な活動で競争も行われていた数学であった。その和算の頂点に立ったのが関孝和で、その門下が「関流」と呼ばれ、他の「派」と抗争したことなどで、近代数学へと連続することができなかった。この「流派」の問題は、安定・停滞していた江戸時代、学問が「社会の変革」の手がかりと言うより、茶道や芸事などと並ぶ「高尚な趣味」かつ「家業」と認識されていたことによると考えられる。
 4.江戸中期、天体観測に基づく正確な「こよみ」が必要となり、幕府に「天文方」が設置された。当初は特定の武家が任命され世襲で担当したが、後には全国から「研究実績」のある人々が(身分を超えて)集められた。江戸後期に中心となったのは煖エ至時(幕府用人)、間重富(大阪の商人)らであり、後に伊能忠敬、煖エ景保らも加わり、ヨーロッパ各国の地理学・測量学書の購読を通じて研究を重ねた。同時に測量器具の開発・製作なども進められ、それが伊能忠敬による「大日本沿海輿地全図」となって結実する。すなわち、ここでは天文学・測量学・地理学に関して相当の体系化・専門化が実現していた。
>  5.一方、医学を中心に発展していた「蘭学」では、組織化も体系化も不十分なまま一部の有力者が大名との結びつきを強めるなどして次第に「一門」、「家の芸」としての要素を強め、医家、翻訳家・通訳としての存在を超えないまま幕末を迎えることとなる。その代表とも言うべきは、6大将軍の侍医から代々将軍家に仕えた「桂川家」であろう。

 改めて、「体系化・専門化」が広範に起こらなかった背景を考えると、江戸時代の日本が事実上「連邦制国家」であったため、優秀な人材の抱え込み・奪い合いといったことが起こり、自由な交流を妨げたこと、安定・停滞していた江戸の社会では、科学技術も「趣味・芸事」のように位置づけられる面があったこと、これらの延長上に桂川家のような「権威」「名門」が生まれる一方で、組織的な学術の発展に繋がらなかったこと、などが挙げられます。
 その一方で、幕府直轄の天文方暦局のように現在の国立天文台と国土地理院を合わせたような高度な機関も誕生し、さらにそこから派生した後の「蕃書調所」は現在の東京大学の前身の一つとなっています。ただ天文方そのものは江戸末期の混乱の中でシーボルト事件と煖エ景保の獄死で弱体化、さらに明治維新というクーデターで倒された「前政権の一部局」であったことで、断絶してしまったのです。

参考:『日本科学史』, 吉田光邦, 講談社学術文庫、『月に名前を残した男-江戸の天文学者麻田剛立』,鹿毛敏夫,角川ソフィア文庫


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 ■2018年03月05日:

Q:衛星が存在する前、地図はどのように作られたのですか?

 「地図」には、世界地図、国家ごとの地図、街や村の地図、さらには街道(道路)や鉄道の地図、といった様々な種類があります。それらが共通の基準に基づいて作られるようになったのは、およそ200年前以降のことで、それまではそれぞれ全く別の方法で作られていました。
 世界地図の場合、良く知られた世界地図で最も古いプトレマイオスの世界図(2世紀)もメルカトルの世界図(16世紀)も、実は旅行記や航海記の情報を集め、一部の天体観測結果などと併せて「描いた "絵" 」なのです。その後、天体観測のための器具と時計(軽度確定に必要)の精度の向上と活発な探検航海によって、海岸線に関してはより正確で情報量の多い世界地図が作られるようになりましたが、内陸も含めた「(ある程度)正確な地図」が作られたのはヨーロッパで19世紀、世界全体についてはまさに衛星以降になります、
 一方、街や村の地図は、古くから「歩測や縄による距離測定」と「見通しによる角度・方位の測定」をもとに比較的正確な図が作られていました。「太閤検地(16世紀末)」はそれを国家的に行おうとしたものです。江戸後期には、浮世絵と同じ印刷出版のシステムで「城下図」や「町絵図」と呼ばれる地図が盛んに作られましたが、現代の地図と重ねても意外に正確なものがあります。
 この時代の簡易な測量技術に、幾何学的な理論化を加えて高度化した「導線法」という平面測量の技法を使い、天体観測による緯度の確認を加えて、日本全土の海岸線を測量、日本地図を作ったのが伊能忠敬で、完成した『大日本沿海輿地全図』(1816)が最初の「測量による日本地図」となりました。
 また、フランスではカッシーニ一族による国土全体をカバーする「三角測量」のチェーン(三角網)が1793年に完成、1799年には全国の地形図が作られることで、上記の「街や村の地図」と「国家の地図」が正しく連結されました。日本でも、明治期に入ってから三角測量(平面位置)と水準測量(高度)を全国に展開し、20世紀始めには全国の地形図を完成させています。


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