「鉄塔倒壊」報道を比較する [2005年5月]


 平成17年4月1日、石川県羽咋市内で、北陸電力の50万ボルト送電線を支える鉄塔が地滑りのために倒壊した。
 これにより、能登半島のほぼ全域で約11万戸が停電したが、別系統で送電し、最大8分後には復旧した。また、倒れた鉄塔の付近では切れた高圧線が国道上に垂れ下がり、国道が通行止めとなっている。
 さらに、発電した電力を送れなくなったため、能登半島にある志賀原発の1号機を手動停止させた。

 以上がニュースの概要であるが、僻地(失礼!)で起こったことのためか、人的被害が無かったためか、各新聞の報道はかなり「いい加減」なものであった。表1に各社の「見出し」を示すが、例えば、最初の時事通信と最後の朝日新聞では、受ける印象が全く異なっている。


表1 各社記事の見出し

時事通信

鉄塔倒壊、11万戸が停電=志賀原発1号機を手動停止−北陸電力

共同通信

石川県羽咋市で鉄塔倒壊 北陸電力で一時停電

毎日新聞

<北陸電力>送電鉄塔が地滑りで倒壊、一時停電 石川・羽咋

読売新聞

地滑りで鉄塔倒れ、送電一時ストップ…石川・羽咋

朝日新聞

送電鉄塔倒れ志賀原発停止 北陸電力


 具体的に記事内容を比較した結果を表2に示す。左側に要素事項を挙げ、当該の記事がそれについて記述していれば○、欠落していれば×を記している。
 時事と読売が「垂れ下がり」と「通行止め」を落とし、共同は「原発停止」を落としている。朝日に至っては、あろうことか11万戸の停電に全く触れていない。生活に直結する「停電」を落として、「原発停止」だけの記事にしてしまうあたりが朝日らしいとも言える。
 結局のところ、最もきちんとしたニュースを伝えていたのは毎日新聞であった。近年劣勢が伝えられる同紙であるが、この記事については高く評価するとともに、健闘を期待したい。


表2 記事内容の比較

  

時事

共同

毎日

読売

朝日

羽咋市福水町で

(1日)夜9時15分に

×

×

50万V送電線の

×

×

×

高さ86mの鉄塔が

地滑りで倒壊し

送電線が断線

×

前後の鉄塔も壊れ

×

×

電線が垂れ下がったため

×

×

国道が通行止めに

×

×

×

能登半島全域で

×

×

約11万世帯が

×

8分間停電した

×

志賀原発も

×

午前4時36分に

×

×

手動で停止した

×


 

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